カーブで光るトヨタ・セリカ ワンランク上のマツダMX-6 ホットハッチ的なローバー220 クーペ 1990年代の煌き(2)

公開 : 2024.06.29 17:46

1980年代のホットハッチに代わり、1990年代に到来したクーペ・ブーム 市民的なトヨタ、マツダ、ローバーの個性が現れた前輪駆動モデル セリカ、MX-6、220の3台を英編集部が振り返る

ステアリングとシフトフィールはベスト

6代目、T200型トヨタ・セリカのドライブトレインでキラリと光るのが、5速MT。プラスティック製のシフトノブはステアリングホイールの近い位置へ伸び、シフトレバーは適度に重く、ストロークも長すぎない。

最高出力175psとパワーの限られた3S-GEユニットの能力を、カーブでも目一杯引き出せる。同時期のドイツ製クーペと比較しても、シフトフィールでは勝るだろう。

トヨタ・セリカ GT(1993〜1999年/英国仕様)
トヨタ・セリカ GT(1993〜1999年/英国仕様)

加えて、ステアリングも3台のベスト。重み付けが丁度良く、不足ないフィードバックが手のひらへ伝わってくる。ロータス級のコミュニケーション力はないとしても、滑らかで扱いやすい。

セリカのサスペンションに、凝ったところはない。前後ともマクファーソンストラット式で、どちらかといえば利益優先のチョイスだといえる。乗り心地は悪くないが、高めの車高と相まって、コーナーではつま先で路面を掴んでいるような感覚がある。

ブラック基調のインテリアは、プラスティック製であることを隠さない。強いコスト意識が働いていたことを、運転席へ座った印象から感じ取れる。

1980年代のホットハッチへ近い体験

対するローバー220 クーペは、落ち着いたファミリーサルーンから派生した事実を名前で物語るが、動的能力は低くない。オーバーハングは短く、全高は低めで、ステアリングは素早く反応。カーブでは機敏に身をこなし、想像以上に運転を楽しめる。

運転席からの視界は広く、ドライバーへ操る自信を与える。ガラスエリアが広いおかげで、車内は明るく居心地が良い。後席側はリアピラーが太く、少し閉じ込められた気分になる。

ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)
ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)

インテリアの雰囲気は、セリカにはない高級感が漂う。Tバールーフの影響で、凹凸の目立つ路面では多少の振動を残すものの、ソリッド感も高い。

ダッシュボードやステアリングホイール、ドアパネルなどは、プラスティック製ながらソフト加工済み。ホンダ由来のセンターコンソールが、車内でちょっと浮いている。

軽く身をこなすシャシーは、ノンターボの220との相性なら良好だろう。しかし、トルセン式のリミテッドスリップ・デフが組まれていても、ターボチャージャーの勢いには圧倒され気味。ブレーキの利きも、加速力には見合っていない。

ステアリングの反応も、僅かに曖昧。コーナーの出口で加速へ移るとフロントの荷重が減り、リミテッドスリップ・デフも介在し、ステアリングホイールは直進状態へ積極的に戻ろうとする。

シャシーへ想定された以上のパワーを楽しむような、1980年代のホットハッチの体験へ近いともいえる。ステアリングホイールをしっかり握り、公道を疾走すればスリリング。洗練性は低いとしても。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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