ティグアンやQ3とも遜色なし! 日産キャシュカイ(旧デュアリス)へ試乗 家族層へ確かに「響く」

公開 : 2024.07.08 19:05

ベストは189psのe-パワー 乗り心地は良好

確認はこのくらいにして発進してみよう。e-パワーで発電を担うエンジンは、高負荷時に小さなノイズを響かせるが、走りの印象はほぼバッテリーEV。189psの駆動用モーターが滑らかに加速させ、リニアに速度が上昇していく。

アクセルペダルの踏み込み量に関係なく、エンジンは稀に回転数を高める場合がある。だが、キャシュカイとの相性は3種類のベスト。回生ブレーキも強力で、e-ペダル・モードではブレーキペダルを踏んだように減速する。

日産キャシュカイ 1.3DiG-T 158テクナ(欧州仕様)
日産キャシュカイ 1.3DiG-T 158テクナ(欧州仕様)

マイルド・ハイブリッドの3気筒ユニットは好印象ながら、6速MTはシフトレバーの感触が曖昧で、ストロークも長め。エンジンの回転数がゆっくり落ち、滑らかな変速が難しく感じられた。

CVTは、アクセルペダルを25%以上踏み込むと、意図した以上に加速させようとする癖がある。アイドリング・ストップでエンジンが始動・停止すると、振動が生じるようだが、ラバーバンドフィールは改善されている。

乗り心地は良好。アスファルトの穴を目立たせず、波長の長いうねりを通過してもボディは揺さぶられにくい。市街地では、路面のツギハギの処理に苦労することもあるが、全体的には快適と呼べる。

試乗車は20インチ・ホイールを履いていたが、凹凸へ身構える必要もなし。ただし、試乗したポルトガルは舗装の新しい区間が多かったけれど。

ステアリングは切り始めが軽く、カーブへ侵入し負荷が増すと重く転じていく。一貫性が高いとはいえず、運転を楽しもうという気になりにくい。小回りは良く利き、市街地で扱いやすい。

更に強みを強化 格上のライバルへ遜色ない

2024年版では、ガラスを厚くするなど、風切り音やロードノイズの低減に努めたと日産は主張する。確かに高速道路を走行しても、車内は従来より静かだ。

運転支援システムは、欧州のGSR2規格へ準拠。同社がプロパイロットと呼ぶアダプティブ・クルーズコントロールは、自然に加減速していた。

日産キャシュカイ 1.3DiG-T 158テクナ(欧州仕様)
日産キャシュカイ 1.3DiG-T 158テクナ(欧州仕様)

ただし、隣車線のクルマへ惑わされたり、必要以上に減速する場面も。上位グレードでは、車線内を自律的に保つようステアリングも制御される。

速度制限の監視機能は少し過剰に反応するようだが、必要なら簡単にオフにできる。車線維持支援などの機能も同様で、ステアリングホイール上のボダンに、それらの設定を保存できるのがうれしい。

燃費は、試乗した157psのマイルド・ハイブリッドで14.9km/L。カタログ値の15.6km/Lに近い数字となった。

英国でのトリムグレードは5段階で、価格は約3万ポンド(約600万円)から。ミドルグレードのNコネクタを指定すれば、パーキングセンサーやLEDヘッドライトなど、必要な装備がひと通り付いてくる。

アップデートで、モダンなデザインと最新の車載技術を獲得したキャシュカイ。扱いやすさはそのままに、更に強みが強化されたといっていい。上質なインテリアも好印象。運転支援システムも高機能だ。

フォルクスワーゲンティグアンアウディQ3など、格上のライバルと比較しても、遜色ない内容といっていい。お手頃なクロスオーバーとして、賢明な選択を求める家族層へ確かに響くに違いない。

◯:モダンなインテリア グーグルを実装し扱いやすいインフォテインメント・システム 座り心地の良いシート
△:マイルド・ハイブリッドと6速MTとの相性が良くない ステアリングの感触が薄い ライバルより狭めの荷室

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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