欧州 中国製EVに追加関税、最大38.1%上乗せ 「身内」から強い反発も
公開 : 2024.06.14 06:05
EUは中国製EVに最大38.1%の追加関税を7月より導入する。市場の競争条件を「公平化」するための措置だが、BMWなど一部の欧州メーカーからは批判的な声が上がっている。
メーカーごとに税率を個別設定
欧州連合(EU)に輸入される中国製の電気自動車(EV)は、欧州における競争条件を平準化するために最大38.1%という高い追加関税を課せられることになった。
EUの行政執行機関である欧州委員会は、「中国当局との話し合いで効果的な解決策が見いだせない場合」、既存の10%の関税に上乗せする形で新たな関税を7月4日から適用すると発表した。
EUのヴァルディス・ドンブロフスキス通商担当委員は以前、「競争は公正でなければならない」と述べている。
追加関税については過去数か月にわたって議論が繰り返されてきた。中国製EVは中国政府の莫大で「不公平」な補助金を受け、欧州車よりおよそ20%安い価格で販売されているとして、その流入をどう食い止めるかが争点となっていた。
欧州委員会は6月12日に発表した声明の中で、各メーカーに個別に関税を課す方針を示した。例えば、ボルボの親会社である吉利汽車(ジーリー)には20%、BYDには17.4%の追加関税が課されることが確認された。
上海汽車は、欧州委員会が調査に協力的でないと判断したため、38.1%が課されることになった。同じく調査に協力しない他の企業にもこの税率が適用されるという。
平たく言えば、現在540万円程度で販売されているモデルが追加関税導入後に750万円近くにまで上昇する可能性があるということだが、実際には各メーカーが損失のほとんどを吸収することになるだろう。
欧州委員会は、自動車メーカーが「十分な反証」を提出すれば税率を見直す可能性があるとしている。
中国メーカーだけでなく、メルセデス・ベンツやBMWミニなど、中国で生産したEVを輸出している欧州メーカーにも21%の追加関税が適用される。上海でモデル3を生産するテスラは、「個別に計算された関税率を受ける可能性がある」という。
これにより、テスラは欧州向けのモデル3の生産をドイツ工場に移す可能性がある。
中国製EVは現在、欧州市場で8%のシェアを占めているが、欧州委員会は2024年末までに15%まで上昇すると予測している。
欧州委員会によると、「EUのBEV生産者に経済的損害を与える恐れがある」ため新しい関税を導入するという。
フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると。中国外務省は追加関税について「市場経済の原則と国際貿易規則に違反している」と主張しているようだ。「保護主義の典型的な例」であり、「保護主義に未来はない。開放的な協力こそが正しい道だ」という。
EUを離脱した英国でも、独自のルールで追随する見通しだ。しかし、英国で新たな法案が提出されるのは7月4日の総選挙後となる。
すべてのEU加盟国が関税に賛成しているわけではない。例えば、昨年中国に21万6000台の自動車を輸出したドイツは貿易戦争を懸念し、中国からの報復措置の可能性を指摘する。
BMWグループのオリバー・ジプセ社長は「間違ったやり方だ」と非難し、次のように述べた。
「欧州委員会はこのように、欧州企業と欧州の利益を害している。保護主義は悪循環を引き起こす危険がある。関税は新たな関税を生み、協力ではなく孤立を招く」
「BMWグループの観点からは、輸入関税導入のような保護主義的措置は、国際市場での競争に貢献しない。自由貿易がBMWグループの基本理念である。BMWはこの原則にコミットしている」