【新型を欧州で試乗】 BEV版とICE版の新型シトロエンC3 ヒット作の次はどんな戦略で?

公開 : 2024.06.18 17:45

ヒット作ゆえに難しいスタイル&フルモデルチェンジを、新しいシトロエンC3はどのように乗り越えてきたのでしょうか? パリ五輪前の欧州でBEVとICE両方の新型シトロエンC3に試乗します。

べつに可愛げだけでヒットしたワケではないけれど…

グローバルで560万台、日本でも1万台超のヒット作となったシトロエンの現行C3。

モデル末期となった今も販売ペースは安定しているそうで、おそらく完全に新型C3へと移行するまでに600万台の大台にのりそうな気配があるとか。

シトロエン新型C3へ欧州で試乗
シトロエン新型C3へ欧州で試乗    シトロエン

日本市場ではシトロエンの上陸以来、インポーター間の統計を確認したわけではないが、単独モデルとして最大のヒット作だったはずだ。

だから新型C3のティーザー画像が流れ始めた時、ずいぶんとデザインが雰囲気ごと変わったことに戸惑った人も少なくないだろう。筆者もその一人で、平たくいってパッと見に「可愛げがなくなった」気がした。

二つ目の心配ごとは、そのSUVアティチュードというか、もうハッチバックとはいえない背高スタイルだ。後に続く兄弟的派生モデル、新しいC3エアクロスが7人乗りでピープルムーバー化することで、棲み分けについてはまぁ納得がいったが、SUVブームの流れを追いかけているような気がしたのだ。

三つ目の心配は「スマートカープラットフォーム」という、初出のプラットフォームを採用した点だった。現行C3はPF1に基づき、208やDS 3といった兄弟モデルが使うCMPとは異なる旧いプラットフォームゆえの適度な緩さがあったと思う。

後に現地で認識不足だったと分かるのだが、世代的にはCMPに電装系モジュールをコンパクト化してネーミングを変えたか?! ぐらいに見くびっていた。

ところが今回の国際試乗会ですっかり杞憂ごとは瓦解し、とことん納得がいった。あまつさえ魅了されてしまった、とさえ白状しておく。

写真で見るよりユーモアとウィットに富んだデザインと佇まい

試乗会の舞台は五輪前のパリの混乱を避けつつ、新型C3が生産されるスロヴァキアのテルナヴァ工場からも遠くないオーストリアだった。

実車と対面してまず感じたのは、オンライン画像で見るより真面目くさった雰囲気でもないこと。先代より明らかにボールド・スタイルだが、意外とファニーな雰囲気なのだ。細い水平ブロック×2と内側にややワイドな垂直ブロックを組み合わせた新ライトシグネチャーは、いかにもハイテク感がある。

シトロエン新型C3へ欧州で試乗
シトロエン新型C3へ欧州で試乗    シトロエン

エクステリア担当デザイナーのシルヴァン・アンリ氏が「グレーディング」と呼ぶ、斜め線ストライプの表面加工や造形は、フロント開口部からリアのガーニッシュやフェンダーまで、新型C3の「ライトモチーフ」といっていい。

見る角度によって手前半分が開いて、奥半分が閉まって見えるため、柄として煩くない。それでいてフロントグリルからリアガーニッシュまでほぼ水平な線として1周する肩口のラインは、潜在的にボディを上下に分けて小舟のように小さく、クラシックに見せる隠れディティールでもある。

‘C-ZENラウンジ’と呼ばれるインテリアも同じく水平基調で、ダッシュボードの意匠に2CVの余韻を認めない訳にいかない。

その下段にはファブリックが張られる一方で、メーターパネルはドライバー正面から最奥位置に備わり、プジョーのi-コクピットのようにステアリング上から視認することになった。

逆に頭上を走るルーフ補強はどこか2CVを連想させるが、10.25インチのタッチスクリーンなど、古典とモダンの絶妙なミックス内装といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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