「気持ち」で買うクルマ フォルクスワーゲンID.バズ 長期テスト(最終) 今後のEVへ必要な個性と特徴
公開 : 2024.06.29 09:45
今後のバッテリーEVへ求められる個性や特徴
それでも、ID.バズのステアリングホイールを1度握れば、笑顔にならずにいられなかった。いくつかの弱点を忘れさせるほど、自分を幸せな気持ちにしてくれた。
フォルクスワーゲンは、愛されるブランドに戻ろうと努めているそうだ。具体的なことは明らかになっていないが、ID.バズは、今のところ同社のバッテリーEVで最もそれを体現できていると思う。
筆者は1972年式のフォルクスワーゲン・ビートル、タイプIを所有していたが、今年になって諸事情で手放した。オレンジ色のビートルを、自分は愛していたのだと実感している。今後のバッテリーEVへ求められる、個性や特徴をしっかり宿していた。
ID.3やID.4は、頭で理解して買うフォルクスワーゲンだろう。だがID.バズは、気持ちで買うフォルクスワーゲンだと思う。とはいえ、市場に存在する多くのモデルとの間で、最終的には悩むことになる可能性は高い。
英国価格はお手頃といえず、この価格帯ならより航続距離の長いバッテリーEVが選べる。急速充電能力が高い例も、3列シートを選べる例もある。
しかしSUVである必要がなく、5シーターで充分で、1度に300km以上走ることが殆どない人にとって、そんな合理性を忘れさせる魅力がID.バズにはある。今回は実現しなかったが、ステレオのボリュームを上げて、いつか真夏の野外フェスを目指してみたい。
セカンドオピニオン
担当者だったペイジは、ヒッピーなイメージに浸っているようだが、スタイリングは好き嫌いがわかれそうだ。自分には、モアイ像の頭に見えてしまう。タッチセンサーやタッチモニターも、正直扱いにくい。
電費も褒められない。多くのバッテリーEVが、6.0km/kWh程度は走れる時代だ。ロードトリップをするとしても、航続距離が短すぎる。英国価格もお高い。代わりにBMW M340d ツーリングを買っても、かなりのお釣りが出るほど。 クリス・カルマー(Kris Culmer)
テストデータ
気に入っているトコロ
友達の輪が広がる:アストン マーティンDBX707などでは、ご近所との交流は生まれにくいだろう。
実用的な車内:フロアはフラットで、荷室は広大。大きく開くスライドドアとテールゲートで、買い物だけでなく、友人の引っ越しにも活躍した。
信じられる航続距離の予測:距離自体は短いものの、バッテリーの残量から正確に航続距離を算出してくれた。移動の計画を立てやすい。
気に入らないトコロ
タッチモニター:インフォテインメント・システムは遅く、グラフィックはベーシック。タッチモニターが嫌いになる人も出そうだ。
運転支援システム:車線維持支援や速度標識読取り機能などは、もう少し磨き込みが必要。運転の気が散ってしまう。
走行距離
テスト開始時積算距離:6298km
テスト終了時積算距離:1万2643km
価格
モデル名:フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)
英国価格:6万2844ポンド(約1219万円)
テスト車の英国価格:6万6394ポンド(約1328万円)
オプション装備
キャンディー・ホワイト+エナジェティック・オレンジ塗装:1800ポンド(約36万円)
インフォテインメント・パッケージプラス:1560ポンド(約31万2000円)
タイプ2充電ケーブル:190ポンド(約3万8000円)
電費&航続距離
カタログ航続距離:410km
駆動用バッテリー容量:77.0kWh(実容量)
平均電費:4.3km/kWh
最高電費:6.1km/kWh
最低電費:3.8km/kWh
実際の航続距離:334km
主要諸元
全長:4712mm
全幅:1985mm
全高:1937mm
最高速度:144km/h
0-100km/h加速:10.2秒
車両重量:2502kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77.0kWh(実容量)
急速充電能力:170kW(DC)
最高出力:203ps
最大トルク:31.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
トランク容量:1121L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:235/50 R20(フロント)+265/45 R20(リア)
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:896ポンド(17万9000円/1か月)
CO2 排出量:0g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
エネルギーコスト:467ポンド(9万3000円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:467ポンド(9万3000円/電気)
1マイル当りコスト:0.12ポンド(24円)