【G7サミットの裏で】露国防省の公式動画に自衛隊「高機動車」  中古車店も堂々と販売する異常事態

公開 : 2024.06.20 07:05

・いまだロシアにもと自衛隊車両が
・出自が明らかな特徴いくつも
・解体の全数検査は可能なのか?

ロシア国防省が公開した動画にもと自衛隊の高機動車の姿が!

2023年6月、AUTOCAR JAPANはロシア国内の中古車店で使用済みの自衛隊車両が販売されていることを報じた。

それ以前にテレグラム発の動画にロシアが戦争に使う高機動車の姿が流れたこともあり、それがきっかけで防衛省の調査にまで至ることになった。

ロシア国防省の公式動画から。
ロシア国防省の公式動画から。

そしてつい2週間前のこと、6月5日にはロシア国防省の公式動画にもと自衛隊の高機動車だとわかる車両が登場した。

空挺部隊の「ZU-23-2」対空機関砲がウクライナ東部ドネツク州チャシブ・ヤール地域で敵の歩兵部隊を排除したと報告されている。「ZU-23-2」はソ連時代に製造された年代モノの機関砲で対空射撃を行う様子も動画からわかる。

ドアパネルにはロシア軍の車両であることがわかる白く大きな「V」の文字が書かれている。運転する様子も流れていたが、もちろん右ハンドルだ。大柄な兵士なのか?スライド機構が壊れているのか?高機動車の運転席は狭そうに見えた。

高機動車はそもそも、自衛隊では人員輸送車として開発した車両で戦闘には不向きとされているが、動画に登場する高機動車はロシア軍が独自に改造した対空砲仕様とされる。

ほかにもロシア軍は数台の高機動車をベースとした戦闘車両を所有しているそうだが、これらの車両はもちろん、正規に日本から送られた中古車ではない。

では、どうやって入手したのか?

それはおそらく、ロシアの中古車販売店に並ぶ高機動車と同じルートだと考えられる。

ロシアの中古車販売店でも高機動車が販売されている

1年前のAUTOCAR JAPANの記事で紹介したが、ロシアの中古車販売店には現在も明らかに高機動車とわかる車両が10台ほど掲載されており、すべて「メガクルーザー」として販売されている。

しかも1年前と比べると価格も全体的に100-200万ルーブル高い。かなり高騰している印象だ。

黄色く囲んだ部分に注目。しっかりと桜星と部隊名が残っている。
黄色く囲んだ部分に注目。しっかりと桜星と部隊名が残っている。

高機動車をメガクルーザーと偽って販売するのは自衛隊車両であることを隠すためであろう。メガクルーザーは高機動車の民生版として販売されたが、ベースは同じであっても両車は明らかに顔も仕様も違う。

そもそも高機動車は基本ボディは幌車(トラック)だがメガクルーザーはクローズドボディである。

ちなみに自衛隊では、陸・海・空それぞれにエンブレムがあり、陸は「桜(桜星)」、海は「錨」、空は「翼」がモチーフとなっている。

そして今回、ウラジオストクの中古車店で販売されている高機動車には、しっかりとフロントグリル中央に「桜星」のエンブレムと、向かって右下に「9通」と読める表示が残っている。

なお「9通」とは「第9通信大隊」のことで第9師団隷下の通信科部隊として青森駐屯地(青森県青森市)にある。第9通信大隊にて使われていた高機動車であることは間違いなさそうだ。

2023年3月の第211回国会で政府参考人として答弁に立った防衛装備庁長官の土本英樹は「解体するときには自衛隊であることがわかるものはすべて外しているので、高機動車と外観上の類似性は認められるが画像だけでは判断できない」と述べた。

前述したロシアの中古車店で販売される高機動車には「桜星」と「部隊名」までしっかり残っている。これでもまだ「自衛隊の高機動車であるとは判断できない」というのだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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