【G7サミットの裏で】露国防省の公式動画に自衛隊「高機動車」  中古車店も堂々と販売する異常事態

公開 : 2024.06.20 07:05

北海道・芽室町の業者が不正行為で指名停止

使用済みの自衛隊車両は業者に払い下げられた後、再度の組み立てができないようかなり細かく分解してドアパネルやフレームなども指定の箇所を切断する。

払下げから3か月以内に破砕または溶解後の写真を添付して自衛隊に提出。その後、「鉄くず」として処分を行う。

ドアパネルやフレームなども指定の箇所を切断する。
ドアパネルやフレームなども指定の箇所を切断する。

当然、再度組み立てて車両として使用することなどできるはずもないのだが……実際にはロシアをはじめフィリピンなど東南アジアの国を経由してロシアに持ち込まれていると推測されている。

「解体すべき車両を解体せず、業者が海外に横流ししている」として国会で指摘を受けた防衛省は2023年4月頃から使用済み車両の「その後」を調査していた。

そして同年12月には解体せずに転売しようとしたとして業者2社が指名停止処分を受けている。

また、今年5月末には新たに北海道・芽室町の解体業者が防衛省から9ヶ月の指名停止措置を受けた。

2023年8月に落札した使用済みの高機動車22台について解体を証明する書類に虚偽の写真を使っていたことが理由だ。

過去に正しい方法で解体した時に撮影した高機動車の写真を何度も使いまわしていたそうだが、切断された車台番号部分の写真はどうやって提出していたのか。

責任者が見て見ぬふりをしていた可能性もある。

実際、防衛省も「車両の解体は原則として立ち合いはなく書類の提出だけ」で「確認が不十分だった」としている。

「今後はすべての解体作業に立ち会うなどして、再発防止を図る」としているが、全数検査は実現できるのか。

一方ウクライナには日本政府支援の自衛隊車両が

海外に持ち出すことは厳禁である使用済みの自衛隊車両だが、実は例外もある。それは日本政府が国際支援やPKO活動のために無償で使用済み車両を提供するケースだ。

最近では防衛省・自衛隊がウクライナ政府からの要請を踏まえて2023年5月に1/2トントラック、高機動車、資材運搬車約100台の使用済み車両の引き渡しを行った。

6月5日には最後となる101台めの支援車両がウクライナに到着した。
6月5日には最後となる101台めの支援車両がウクライナに到着した。

これらの車両は約1年をかけて順次ウクライナに輸送され、最終便(101台目を含む)が2024年6月5日にウクライナに到着したことが在ウクライナ日本国大使館のX(旧ツイッター)で明らかにされている。

政府が主導してウクライナに提供する使用済み車両であれば、ぜひとも活躍を願いたいものだが……ロシアが非合法的手段で手に入れた元自衛隊車両がウクライナへの侵略に使われるのは、許せないものがある。

日本国民の血税で購入した車両が役目を終えたあと、不正な方法で第三国を経由してロシアに入りウクライナの自由と主権、民主主義を脅かすために使われている……。

現在は中古車として販売されている高機動車も、やがてはロシア側に流れていく可能性もある。それは大問題ではないか。

ウクライナ側は日本政府から正式に寄贈された高機動車で、ロシア側は不正に入手した高機動車でそれぞれ戦っている。

だが、同じ日本発の高機動車がウクライナの国民、領域、主権を否定する侵略行為にも使われているのは許しがたい行為だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

関連テーマ

おすすめ記事

 

ウクライナ情勢の人気画像