欧製ステーションワゴンの出発点 モーリス・オックスフォード・トラベラー ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ(1)

公開 : 2024.07.07 17:45

ステーションワゴンとして悪くない動力性能

シリンダーヘッドにアルミニウムを採用するなど、軽量化にも気は配られた。自社で開発・製造された4速マニュアル・トランスミッションも、ケースはアルミ製。車重は、ルーフが伸ばされたコンビでも1090kgに留まった。

最高速度は149km/h。0-100km/h加速は18.5秒と、実用性を求めたステーションワゴンとしては悪くない動力性能を得ていた。

ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ(1954〜1961年/英国仕様)
ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ(1954〜1961年/英国仕様)

それ以外の技術面も、特に先進的ではなくても、現代的に再解釈されていた。ボディはシャシーと一体のモノコック構造。前後にサブフレームが組まれ、機械的な振動を伝えないよう、フロント側にはゴムマウントが挟まれた。

サスペンションは独立懸架式。フロント側は、不等長のウィッシュボーンにコイルスプリング、ダンパーという組み合わせ。リアは、スイングアクスルにコイルスプリング、アームを介したダンパーで構成。安定した操縦性と、快適性が狙われた。

今回ご登場願ったイザベラ・コンビは1960年式で、現在はグラハム・マンダーズ氏がオーナー。美しいだけでなく、オリジナル度が極めて高い。現役時代は、高水準なモデルだったことを理解できる。

グレートブリテン島へ輸入したのは、ボルグヴァルトの英国ディーラー、メトカーフ&マンディ社。ロンドンの南東部、オーピントンに住んでいたエディス・フランシス・シア氏へ納車されている。

ディティールにも配慮されたスタイリング

マンダーズは、スウェーデンやドイツへ自動車旅行を楽しんでいるが、走行距離は10万3000kmほど。年式を考えると驚くほど短い。しかも、レストアも必要なかったらしい。定期的なメンテナンスだけで、2024年まで良好な状態が保たれてきた。

スタイリングは、少々賑やかな印象のオックスフォード・トラベラーと並ぶと、上品なシンプルさが際立つ。ボディサイドは適度に丸みを帯び、その上にスリムなウインドウが載っている。

ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ(1954〜1961年/英国仕様)
ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ(1954〜1961年/英国仕様)

ヘッドライト・ベゼルにはクロームメッキが施され、テールライトはフィンのように後端で立ち上がっている。ディティールにも配慮されたことが見て取れる。

サイドヒンジのテールゲートは、右側から付き出たレバーを引き下ろすと開く。リアシートの座面を持ち上げ、背もたれを倒せば、奥行きのあるフラットな荷室が姿を表す。ホイールアーチが膨らんでいるが、スクエアで使いやすそうだ。

ただし、イザベラ・コンビは3ドア。リアドアはなく、後席への乗降性は良くない。オックスフォード・トラベラーと異なり、荷物も横から引き出すことはできない。

前席側はモダン。ドアには三角窓を開くノブが備わり、ヒーターは運転席と助手席で別々に調整できる。シガーソケットを利用した、点検用のライトも備わる。

フロントシートはリクライニングできる。ダッシュボードは硬いベークライト樹脂製で、スピードメーターは横に長いストリップ・タイプ。それを囲むように、水温計や油温計、時計などが並ぶ。

この続きは、ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ モーリス・オックスフォード・トラベラー(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ モーリス・オックスフォード・トラベラーの前後関係

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