見た目を裏切らない! ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ 雰囲気と裏腹な? モーリス・オックスフォード・トラベラー(2)

公開 : 2024.07.07 17:46

英国の中流階級が味わったであろう体験

ご登場いただいたオールドイングリッシュ・ホワイトとアーモンド・グリーンの1台は、マーティン・ハミルトン氏がオーナー。1959年式で、2016年に購入したそうだ。

似たようなクルマに乗っていた、父との平穏な記憶が蘇ってくると彼は話す。実用的なシルエットでありながら、ポップなイメージが湧いてくる。

モーリス・オックスフォード・トラベラー・シリーズIV(1957〜1960年/英国仕様)
モーリス・オックスフォード・トラベラー・シリーズIV(1957〜1960年/英国仕様)

左右が深くえぐられたボンネットは、数年前のヴォグゾールに似ている。クロームメッキのモールが塗装部分を仕切り、小さなフィンが突き出たリアへ続く。給油口は左右両方に備わる。うっかり、ポンプの位置を間違えても大丈夫なように。

フロントマスクは、クロームメッキが目立つ。バンパーへ追加されたオーバーライダーが大きい。2灯のスポットライトは、フロントガラスのバイザーと同様に、正規オプションだった。

イザベラ・コンビと異なり、テールゲートは上ヒンジで、荷室の床面は位置が高め。その下にスペアタイヤとジャッキが収納されており、別のリッドからアクセスできる。5ドアだから、リアシートへの乗降性は良い。

運転席へ座ると、当時の英国の中流階級が味わったであろう体験へ浸れる。フロントシートはプリーツが施されたレザー張りで、クッションは厚く、3名が並んで座れる。シフトレバーを手前側へ倒すと、中央に座る人の脚へ触れることになるが。

リアシートもベンチで、定員は6名。中央にアームレストが格納され、2名で座ればゆったり。足もとの空間は充分に広い。

驚くほど運転する魅力度が高い

着座位置が高く、大きなステアリングホイールは3スポーク。中央のハブ部分から、ウインカー用のレバーが伸びる。

金属製ダッシュボードの中央に、大きなスピードメーターと補機メーターが並ぶ。その下に、引っ張るタイプの一連のスイッチ。オックスフォード・トラベラーの車内は、モダンなドイツ・デザインで仕立てられたイザベラ・コンビより、英国人には居心地が良い。

モーリス・オックスフォード・トラベラー・シリーズIV(1957〜1960年/英国仕様)
モーリス・オックスフォード・トラベラー・シリーズIV(1957〜1960年/英国仕様)

クラシカル・アメリカンな雰囲気を漂わせるスタイリングと裏腹に、オックスフォード・トラベラーの走りは軽快。背筋を伸ばした運転姿勢が、ロンドンタクシーの運転手気分にさせるが、ステアリングホイールは適度に重く、ペダルの間隔も丁度いい。

Hパターンのシフトレバーは、ストロークが長めとはいえ、コクリと素直に入り変速しやすい。穏やかな動力性能と調和している。

変速直前の回転数に達すると、ドライでスポーティな排気音が耳に届く。イザベラ・コンビよりギア比は低く、80km/hを超えるとエンジンの存在感が大きくなる。

ステアリングのレシオはスローで、カーブでは腕の仕事量が多いものの、反応は正確。ボディロールは大きめながら、実用的なステーションワゴンであること考えると、全体的な完成度の高さと相まって驚くほど運転の魅力度が高い。

それでも、イザベラ・コンビの方が水準は上にある。ブレーキも、あまり利かない。リジットアクスルのリアサスペンションは、安定性が高いとはいえ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ボルクヴァルト・イザベラ・コンビ モーリス・オックスフォード・トラベラーの前後関係

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