覚醒したパワートレインへ舌を巻く マクラーレン・アルトゥーラ 750Sより魅力的? 長期テスト(5)
公開 : 2024.06.30 09:45
より速く、より軽くを追求してきた、マクラーレン最新のアルトゥーラ 普段使いで新たな発見はあるのか V6ハイブリッド・スーパーカーの実力を長期テストで確認
もくじ
ー積算8832km タイヤを認識するアルトゥーラ
ー舌を巻くパワートレインのパワフルさ
ー750Sと乗り比べ 乗り換えたいと思うか?
ー積算9476km 普段使いで大切なヒーター
ー積算9646km 回生ブレーキは備わらない
ーテストデータ
積算8832km タイヤを認識するアルトゥーラ
ピレリのサマータイヤへ履き替えた、長期テストのアルトゥーラ。ついに本領が発揮されるようになったと前回お伝えしたが、実は同じ経験を以前にもしている。数年前にお借りしていた、マクラーレン720Sでも同様の変化があった。
スタッドレスタイヤから履き替えた途端、200馬力くらいパワーアップしたのでは、と感じるほどだった。それまでも、もちろん胸がすくほど速かった。だがサマータイヤを履いた720Sは、タガが外れたように速く感じられた。
それと似た変化が、ハイブリッドのアルトゥーラにも起きた。加速が鈍く感じることはなかったものの、駆動用モーターが加勢してもこの程度なのかな、と感じていたことは否定できない。
しかしこれは、単にスタッドレスタイヤのトラクションが制限していたことだった。高速域で表出するスリリングさには、息を呑むほど。マクラーレンへ電話し、この事実を確認せずにいられなかった。
スタッドレスタイヤを履いているとアルトゥーラが認識していることは、長期テストの早い段階で知っていた。ダッシュボード中央のタッチモニターでメニューを辿ると、現在のタイヤに関わる情報が表示されるからだ。
これは、スタッドレスタイヤが許容する速度を超えないため、重要なことといえる。一般的に、サマータイヤより100km/h程度は低い。また、最新の「サイバー」タイヤにはセンサーが内蔵されており、空気圧や表面温度が車載システムへ送られてもいる。
舌を巻くパワートレインのパワフルさ
筆者はてっきり、その情報を読み取り、アルトゥーラがパフォーマンスに制限をかけているのだろうと想像していた。ところが、マクラーレンの技術者へ確かめると違っていた。
V6エンジンの出力特性や、トラクション/スタビリティ・コントロールのマッピングは、タイヤを問わず同一だという。あらゆる状況に対応できるよう、始めからプログラミングされているそうだ。スタッドレスタイヤでもサマータイヤでも、関係ないらしい。
つまり、それらのコントロールが介入し、これまでは加速を穏やかにしていたに過ぎなかったようだ。筆者が今まで気づかなかった理由を考えると、警告灯が小さく、ステアリングホイールのリムに隠れてしまっていたことが1つ。
また、介入が極めて自然で、パワーが絞られているようにしか感じなかったことも大きい。改めて、マクラーレンの技術水準の高さには驚かされる。
過去に自分は、マクラーレン・セナでトラクション/スタビリティ・コントロールをオフにしたことがある。違和感なく運転している最中に、警告灯が点滅していたためだ。しかしオフにした途端、慌ててしまった。すぐにオンへ戻そうと考えを改めたほど。
アルトゥーラは、そこまで急激な挙動は示さない。それでも、完全な全力を路面へ伝えられるようになった今、ハイブリッド・パワートレインのパワフルさには舌を巻く。