英国総選挙 自動車関連の争点は「エンジン車禁止の時期」「EV支援」か 各党の公約は?

公開 : 2024.06.29 18:05

7月4日に英国で総選挙が行われる。自動車産業の支援に重点を置く与党、エンジン車の禁止を早める野党など、各党の自動車関連の公約を紹介する。

政権交代? 自動車産業への影響は

英国では7月4日に総選挙が行われる。各政党は電気自動車(EV)補助金の再導入、2030年のエンジン車禁止、道路環境の改善、都市部の環境政策の見直しなど、さまざまな自動車関連政策を掲げている。

与党の保守党、最大野党の労働党、自由民主党などはそれぞれ、国内自動車産業をマニフェストの重要な柱に位置づけている。自動車の将来性が、国民の移動の自由や英国経済に大きな影響を与えると認識しているのだ。

政権交代の可能性が高いとも言われる英国の総選挙。自動車に関する各党の公約を見ていこう。
政権交代の可能性が高いとも言われる英国の総選挙。自動車に関する各党の公約を見ていこう。

今回は、総選挙に向けた各政党の公約で、自動車に焦点を当てた主要な政策を紹介する。

保守派(Conservatives)

与党・保守党は、どの政党よりも自動車関連の公約を多く盛り込んでいる。一部を取り上げよう。

自動運転

リシ・スナク党首(現首相)は、自動運転車の大規模導入を可能にする新しい法案を提出すると述べている。現在、英国では完全な自動運転システムは合法ではない。新しい法案は「Automated Vehicles Act(自動運転車法)」と呼ばれ、主に安全性に関する枠組みを作り、商業化の実現に重点を置く。

保守党は自動車産業に重点を置き、国内工場の支援を約束している。
保守党は自動車産業に重点を置き、国内工場の支援を約束している。

法案提出時期については、「次の議会中」という緩い約束しかしていない。この法案は当初2025年に予定されていたが、総選挙によって延期される可能性が高い。

EV

EVについては、主に急速充電サイトの増設を中心に、「真に全国的」な充電インフラで購入者をサポートすることを約束している。

保守党は昨年、公共のEV充電インフラの整備に時間が必要なことや、欧州連合(EUやカナダ)など他の主要地域との整合性を理由に、エンジン車の新車販売禁止を2030年から2035年に延期した。

大手メーカーや業界団体の呼びかけにもかかわらず、EVの販売拡大に向けたインセンティブ(奨励金などの優遇措置)は約束されていない。

道路整備

保守党はさらなる道路整備を約束している。これは、2015年以降「戦略的」道路に費やされた400億ポンドの予算に上乗せされるものだ。

追加予算には、長らく難航しているテムズ川下流横断道路の建設や、交通量の多いA303およびA1幹線道路の改良工事などが含まれる。

自動車産業への支援

保守党は、自動車産業を「わが国の製造業の王冠に輝く宝石」と呼び、中国との厳しい競争に直面している同産業を支援することを約束した。

「他国が国際貿易ルールに違反している証拠があれば、国内自動車メーカーを支援する用意がある」と述べている。

マニフェストには記載されていないが、保守党が再選を果たした場合、EUと協調し、中国製EVに厳しい関税を課すかどうかが重要な検討事項となる。以前、マーク・ハーパー運輸長官は中国製EVの流入に対処するための「強固な対策」を約束した。

スナク党首はまた、「英国の熟練した雇用を守るため」に、EVに移行する自動車メーカーを支援すると約束した。国内に大規模工場を抱えるJLR(ジャガーランドローバー)、ミニ、日産ヴォグゾールはいずれも各工場の電動化に取り組んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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