色々許せちゃう多能ぶり! スズキ・イグニスへ英国試乗 オフロードタイヤなら悪路も得意

公開 : 2024.07.06 19:05

動力性能は平均程度 素晴らしい燃費

動力性能は、都市部を前提にするシティカーの平均。特に速いわけではなく、0-100km/h加速に12.8秒を要するが、これで構わないだろう。高速道路の合流で、走行車線の速度へ合わせるのに苦労するほどではない。高速走行は、イグニスの得意分野でもないが。

1.2L自然吸気エンジンは、軽くは吹け上がらない印象だが、低回転域で5.1kg-mをアシストするマイルド・ハイブリッドの効果は明らか。発進停止の多い区間で、エンジンを過度に気張らせる必要はない。

スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)
スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)

5速MTのシフトレバーは軽く倒せ、ストロークが短く扱いやすい。ブレーキも漸進的に効き、停まる直前の制動力を調整しやすい。

2017年の登場当時は、やや洗練度の低さが目立った乗り心地ながら、2020年のフェイスリフトで改善。とはいえ滑らかなアスファルトでも、ピタリと落ち着いているわけではない。特にリジッドアクスルの四輪駆動では。

舗装のツギハギの多い区間では、初期型より快適といえるものの、低速域で揺れが目立つ。速度域が上昇すると、お手頃なこのクラスなりに、車内のノイズも小さくはない。

カーブが連続する区間では、ゆったり身をこなし、スポーティな印象は得にくい。少なくともグリップ力は高く、姿勢制御も一定の敏捷性を叶えられる程度に締まりはある。オフロードもこなすコンパクトSUVとして、充分に納得できる範囲だろう。

燃費は素晴らしく、荒っぽく運転しても18.0km/L前後は難しくない。前輪駆動を丁寧に扱えば、23.0km/Lも夢ではない。

実は驚く悪路性能 便利で好感を抱ける小型車

四輪駆動のイグニスなら、オフロードタイヤへ交換するのも一興。ゴツゴツした岩場を難なく進み、急勾配をスルスルと登り降りする能力へ驚けるはず。ギア比が低い1速に入れたまま、83psの最高出力をしっかり使い切れる。

フロントタイヤが滑ると、ビスカスカップリングを介して、リアタイヤへトルクが割り振られる。最低地上高は180mmあり、ホイールベースも前後のオーバーハングも短い。電子制御のヒルディセント・コントロールまで備わる。

スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)
スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)

英国価格は、エントリーグレードで約1万8000ポンド(約360万円)から。装備は充実し、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援、エアコン、LEDヘッドライト、プライバシーガラス、16インチ・アルミホイールなどが標準で付いてくる。

残念なことに、英国ではスズキ・ジムニーを乗用車仕様で購入できない。その代替になるわけではないものの、いざという時に威力を発揮する四輪駆動の小さなSUVとして、英国では唯一といえる選択肢にある。

フィアットは、パンダ 4x4の生産を終了した。予算に余裕があるなら、ダチア・ダスターという魅力的な選択肢もあるが、こちらは600mm以上長い。

他にはない個性と優れた実用性、価格価値の高さはイグニスの明らかな強み。多様な路面へ対応でき、便利で好感を抱ける、稀代のコンパクトカーだと思う。

◯:素晴らしい車内パッケージングが生む空間と実用性 見た目と同じくらい運転も楽しい 四輪駆動システムで驚くほど悪路に強い
△:インテリアの品質は、欧州製モデルへ明確に劣る 低速域でやや粗い乗り心地

スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)のスペック

英国価格:1万9695ポンド(約394万円)
全長:3700mm
全幅:1690mm
全高:1720mm
最高速度:165km/h
0-100km/h加速:12.8秒
燃費:18.5km/L
CO2排出量:121g/km
車両重量:940kg
パワートレイン:直列4気筒1197cc 自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:83ps/6000rpm
最大トルク:10.9kg-m/2800rpm
ギアボックス:5速マニュアル(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事