マクラーレン750S 詳細データテスト 本能を揺さぶる加速 ダイレクトなハンドリング 引き締まった脚回り

公開 : 2024.06.29 20:25  更新 : 2024.06.30 13:00

走り ★★★★★★★★☆☆

リカルドが手がけるマクラーレンのV8ツインターボ、そのサウンドチューンにかなりの時間をかけたとメーカーが主張する仕様について、再び議論するときが来た。少なくとも新型のステンレスエキゾーストによって、キーとなる特定の周波数が高められているという。

その結果、たしかに音量は大きくなった。以前よりキレがよくきめ細かくなったところもあるだろう。それでもまだ粗くて電化製品的なところがあり、不満も残る。主観的には耳にうれしいものではなく、そこは妥協するしかなさそうだ。

中回転域の怒涛のトルクと、8100rpmまで衰えない回転フィールを併せ持つエンジンは秀逸だ。
中回転域の怒涛のトルクと、8100rpmまで衰えない回転フィールを併せ持つエンジンは秀逸だ。    JOHN BRADSHAW

それでも、パフォーマンスはすばらしい。ハリケーンのように力強い中回転域のブーストに、高回転の激しい唸りが続く。ひとつのエンジンで両立するのは、なかなか難しいのだが。

マクラーレンが立派なのは、パワーデリバリーにおけるリニアでないところや凶暴さをちっとも不安視していないこと。全開にすると、M840T型V8はビッグボアのターボらしい強烈な湧き上がりが、2500~5000rpmの回転域で明らかに感じられる。まるで、カタパルトから打ち出されるような感覚だ。

トルクがピークに達する5500rpmくらいからはそれも収まってくるが、代わってペダルの正確さやキレのいいレスポンスが表れ、それがレッドラインの8100rpmまで続く。

720Sより低めのギア比とブーストの強いエンジンにより、750Sが荒々しいキャラクターとなっているのは間違いない。しかし、タイムはどれくらい変わっているのか。ドライコンディションで、Pゼロ・コルサを履いたテスト車は、0-161km/hで0.2秒、0-273km/hとゼロヨンで0.1秒の削減。オプションのトロフェオRを履けば、また違う結果が出ただろう。

ちなみに、電動アシストを備えたフェラーリ296GTBは、0-161km/hが0.3秒早かった。ただし、あちらのテスト車は、レース用のハイグリップタイヤを装着していた。

客観的なデータはさておき、このエンジンとギアボックスは大いに好感を持てる。さらに第2のローンチコントロールモードが与えられ、さらに本気の速さを追求。表情豊かなドラマティックさと、コントロールされたホイールスピンが、走りに加わった。

SSGトランスミッションの変速は信じられないほど積極的で、驚かされる。ブレーキも恐ろしく強力で、113-0km/hテストは720Sを凌ぐ39.4mをマーク。296GTBはさらにいい成績を出したが、先に述べたように、あちらはミシュランのレースタイヤに近いカップ2Rを履いていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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