ディーノ以来の大進化! 360 モデナ/スパイダー/チャレンジ・ストラダーレ(1) 想像以上に優しいフェラーリ

公開 : 2024.07.14 17:45

スーパーカーの新基準を打ち立てた、360 アルミ製スペースフレームにF1マティック 極上のNA V8サウンドを全身で浴びる 歴代で最も普段使いしやすかったフェラーリを英編集部が振り返る

鼓膜が破れる勢いで反響したV8サウンド

何より記憶へ刻まれたのは、フラットプレーン・クランクが組まれたV型8気筒エンジンが放つ雄叫びだった。イタリアの高速道路、アウトストラーダのトンネルへ入り、8000rpmを超えると、鼓膜が破れる勢いで反響した。

ポルシェ911 GT3やノーブルM12、ケータハムR500などと縦走していたから、一層のボリュームといえたが、フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレのサウンドは、人間の許容値を超えていた。それでも、病みつきになる体験でもあった。

ブルーのフェラーリ360 モデナと、レッドの360 スパイダー、シルバーの360 チャレンジ・ストラダーレ
ブルーのフェラーリ360 モデナと、レッドの360 スパイダー、シルバーの360 チャレンジ・ストラダーレ

それは2003年の話し。筆者は同僚とともに、AUTOCARのパフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤーを決めるため、ミラノ郊外にあるピレリ社のテストコースを拠点に比較試乗をしていた。最高に刺激的な数日間になった。

360 チャレンジ・ストラダーレは、まだ発売されたばかり。スーパーカーの最高峰に躍り出たことは明らかだった。フェラーリに求めるすべてが備わっていた。

騒音に対する規制が緩かった時代に、94dBが110km/hで計測された。音量だけでいえば、R500の方が1dB大きかった。全身の毛を逆立てるような音響は、今でも忘れることができない。

その360 チャレンジ・ストラダーレのベースとなった360 モデナは、1999年に登場。既に完成度は高かった。それから四半世紀が過ぎ、最もコストパフォーマンスに長けたクラシック・フェラーリになっていることへ、読者はお気づきだろうか。

ミドシップ・フェラーリ誕生以来、最大の進化

数10年前に、ディーノ206 GTでミドシップ・フェラーリの歴史が始まって以来、最大といえる進化を遂げていた。ボディだけでなく、シャシーとサスペンション、エンジンなど、主要コンポーネントの殆どはアルミニウム製だった。

ボディサイズは先代のF355から10%ほど拡大し、キャビンのゆとりは増えていた。それでいて、車重は22kg増の1447kgに留まった。

フェラーリ360 モデナ(1999〜2005年/英国仕様)
フェラーリ360 モデナ(1999〜2005年/英国仕様)

新世紀を迎えるフェラーリとして、360 モデナには高い期待が掛かっていた。より速く、より使いやすくを求めて、新技術が積極的に導入された。

スタイリングを手掛けたのは、ピニンファリーナ社。リトラクタブル・ヘッドライトは廃止され、ボディへ埋め込まれた光源はカバーで覆われた。流麗にカーブを描く、空力性能を重視したフォルムが描き出された。

最大の特長は、V8エンジンの全体像を外から眺められる、巨大なガラス製リッド。ボディサイドの上下には、エンジン冷却用のインテークが開いたが、控えめなサイズでスムーズな面構成に調和していた。

フロントグリルは、中央の大きな楕円形ではなく、ナンバープレートの両脇へ二分。左右のラジエーターへ、大量の空気を導いた。一段持ち上げられた中央からは、リアのディフューザーへ気流を誘導。ダウンフォースはF355の4倍に達した。

ホイールベースは、F355から150mm延長。2+2のフェラーリ456と同等だった。キャビンはボディのフロント側へシフトし、その頃、最もスタイリッシュなスーパーカーだったといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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