NA V8サウンドを全身で浴びる フェラーリ360 モデナ/スパイダー/チャレンジ・ストラダーレ(2) 今が狙い時!

公開 : 2024.07.14 17:46

モデナより110kg軽いチャレンジ・ストラダーレ

走行距離は8万kmを超えているものの、確かにフィーリングはソリッド。360 モデナとの違いは、殆ど看守されない。120km/h近い速度でも、助手席の人と楽しく会話できる。乗降性も良い。気温が丁度いい季節は、間違いなくドライブが楽しいだろう。

筆者の感覚では、より高次元でクルマと一体になれる印象。より昔のクラシック・フェラーリと重なる体験だと思う。

フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレ(2003〜2005年/英国仕様)
フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレ(2003〜2005年/英国仕様)

小さな欠点といえるのが、ステアリング。360 モデナのように正確でクイックだが、凹凸の目立つ路面ではステアリングコラムがかすかに震える。アルミ製のルーフを切り取った見返りだ。

そして、極限まで360の能力を追求したのが、チャレンジ・ストラダーレ。2003年の英国価格は13万3025ポンドで、約3万ポンドもモデナより高かったものの、別次元といえるフェラーリを購入できた。

ワンメイクレースの360 チャレンジ・レーサーから派生した360 チャレンジ・ストラダーレは、大幅に軽く強力だ。カーボンファイバーが多用され、ウインドウガラスは薄く、リアウインドウはアクリル製へ置換。360 モデナより、110kgも軽い。

車内には、2脚のカーボン製シート。ドアパネルもカーボン製。防音材は、最低限しか残っていない。ブレーキディスクはカーボンセラミック製で、サスペンション・スプリングはチタン製。ホイールとナットも軽量化され、バネ下重量を5kg削っている。

極上のNA V8サウンドを全身で浴びる

3.6L V8エンジンは吸排気系を一新。最高出力は20ps増しの425psへ、最高速度は299km/hへ上昇し、0-100km/h加速は4.1秒へ短縮された。それでも、ホイールやエンブレム以外、見た目の差別化は最小限といえる。

トニー・ウィリアムズ氏の360 チャレンジ・ストラダーレは、シルバーの左ハンドル。右ハンドルは、100台しか作られていない。

フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレ(2003〜2005年/英国仕様)
フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレ(2003〜2005年/英国仕様)

深いバケットシートへ身体をはめ、カーボンが露出した軽いドアを閉める。レース・モードを選択すると、本領発揮の準備は万端。アイドリング時から、360 モデナにはないV8エンジンの勇ましさを感じ取れる。

左ハンドルで、ペダルのオフセットは小さいようだ。それ以外、運転姿勢や快適性はほぼ変わらず。トランスミッションはF1マティックのみの設定だったが、シリアスな360 チャレンジ・ストラダーレには適材だろう。変速は間髪入れず素早い。

右足へ力を込め、極上のNA V8サウンドを全身で浴びる。回転数を問わず加速は鋭いが、低回転域での粘り強さも失っていない。開けた道路で集中力を保てれば、最高の体験を享受できるに違いない。

軽量化が報われ、ステアリングは一層魅力的。乗り心地はハードだが、シャシーの能力を最大限に引き出せる、高精度な姿勢制御を叶えている。

近年は、お買い得だったフェラーリ・モンディアルや400なども価格が上昇中。360モデナに、まだ高騰の波は押し寄せていない。当時最も先進的で完成度の高かったフェラーリを、それらと同等の予算で探せるチャンスは、逃さない方が良いかもしれない。

協力:マイク・ウィーラー氏、ラードリー・モーターズ社、フェラーリ・オーナーズクラブGB、シルバーストーン・サーキット、ゲイリー・マリンズ氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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