「さよなら」ジャガーのサルーン XF 250PSでラストラン(1) 高い一貫性 濃い一体感

公開 : 2024.07.06 09:45

抜群に美しいスタイリングだった4代目XJ

デイリーは中古車販売店を営む、プロの犯罪者であり詐欺師だった。愛すべき悪党の1人に数えられると思う。

彼が愛車にしたのが、ジャガーXJ。初期のマインダー・シリーズに登場したのは、1973年のXJ6 4.2シリーズIIだったが、途中からXJ シックスと、XJ ダブルシックスへ変わっている。兄弟モデルといえた、デイムラー・ソブリンのステアリングホイールも握った。

ジャガーXJ(2010〜2019年/英国仕様)
ジャガーXJ(2010〜2019年/英国仕様)

本来なら今回の試乗車も、2009年に発表された4代目XJがベターだったかもしれない。しかし、惜しいことに生産は5年前に終了している。

デザイナーのイアン・カラム氏は、エグゼクティブ・サルーンとして抜群に美しいスタイリングを生み出したが、新車での手配は既に叶わない。当時は、最も運転しやすい大型サルーンでもあった。

少々型破りな人物のデイリーは、贅沢を喜ぶ志向を持ち合わせていた。大変な仕事は部下へ頼み、ライベート・クラブで酒を傾け、高価な葉巻を嗜んだ。キャメルのコートを、心地よさそうに着こなした。

あいにく、現在のロンドン西部へ広がる住宅街に、贅沢を謳歌する余裕は感じられない。気前の良いジャガー・オーナーへ、意見を伺うことは難しいようだ。電動クロスオーバーの方が、2024年のこの景色には馴染むようにも思う。

運転しやすく快適で、体格の良い数名を乗せられる

ハマースミスでの取材を諦め、その北にあるシェパーズ・ブッシュ・エリアへ移動してみる。鉄道をくぐるアーチの下に存在することになっていた、デイリーの倉庫を探してみる。ところが、クロスフィットという、新エクササイズのスタジオになっていた。

怪しい物品を、こっそり保管しておく雰囲気とはまるで違う。ジャガーが似合うともいえないようだ。

ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)
ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)

さらに西へ足を伸ばし、サウスオール・ガスワークスを目的地にする。この辺りは庶民的なエリアで、工場も隣接していたはず。様々な人が暮らしているから、ジャガー愛好家も見つかるかもしれない。

その1人として思い浮かぶのが、ジャック・リーガン警部。もっとも、「ロンドン特捜隊スウィーニー」というテレビドラマに登場した主人公だけれど。彼が運転したのはフォードのパトカーだが、荒涼とした倉庫街を逃げるジャガーを執拗に追いかけていた。

「犯人は時速90マイル(約145km/h)で逃走中。命令がおりたので、ヒースロー空港の倉庫に悪党一味を閉じ込めます」。というやり取りで向かったのが、この場所だった。

犯人が乗っていたのは、スポーティな4ドアのジャガー。この設定には、ちゃんと理由があった。運転しやすく快適で、体格の良い数名の相方を乗せられ、逃走に充分な速さも備えていたからだ。

この続きは、ジャガーXF 250PSでラストラン(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ジャガーXF 250PSでラストランの前後関係

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