周囲と「違うモノ」を選びたい気持ち ジャガーXF 250PSでラストラン(2) 孤立を恐れない知的な雰囲気

公開 : 2024.07.06 09:46

上級サルーン市場から、しばしの撤退を決めたジャガー 一体感の強い運転体験を叶えたXF 現代基準でしっとりした乗り心地 ステアリングは正確 シャシーは敏捷 英編集部が魅力を再確認

現代の基準ではしっとりした乗り心地

筆者が乗るジャガーXF 250PSを走らせるのは、2.0L 4気筒ガソリンターボ。XJ時代に載っていた、大排気量の6気筒エンジンにパワーでは敵わない。

それでも、動的な特徴はしっかり受け継いでいる。最高出力は250psで、最大トルクは37.1kg-mと充分。0-100km/h加速を6.5秒でこなす。

ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)
ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)

乗り心地は、XJ並みにしなやかというわけではないが、現代の基準でいえばしっとり。テレビドラマ、「ロンドン特捜隊スウィーニー」でジャガーのサルーンを選んだ犯人も、気に入ってくれるだろう。

不足なく速く、後輪駆動。スタビリティ・コントロールの効きを選べ、ステアリングもクイック。パトライトを光らせたフォードのサルーンが追いかけてきても、倉庫街をすばしっこく駆け抜け、逃亡できるかもしれない。

しかし、サウスオール・ガスワークス・エリアも昔とは違っていた。グリーン・クォーターという名前で再開発が進み、高級住宅が並んでいる。条件の良い物件は、39万9000ポンド(7980万円)以上。警備員が配備され、子どもや犬が遊べる広い公園もある。

運河が近く、おしゃれなカフェも探さずに見つかる。この付近にも、ジャガー製サルーンのオーナーは見当たらないようだ。

もちろん、ラグジュアリーなXFは場違いに見えない。だが、電動スクーターや電動クロスオーバーなら、もっと映えるだろう。配送業者のバンも、良く馴染むが。

ステアリングは正確 シャシーは敏捷

ジャガーのサルーンが見つかりそうな場所を、もう一度考える。古い筆者の記憶は、あてにならないかもしれないが。

秘密情報部、MI6の職員は乗っているかも。体制的な組織だから、その重役なら可能性はある。テムズ川沿いに東へ進み、ロンドン中心部のミルバンクへ。ここには、SISビルと呼ばれる、英国の秘密情報部(SIS)の本部がある。本物の。

ジャガーXF インジニウム2.0 250PSを運転する筆者、マット・プライヤー
ジャガーXF インジニウム2.0 250PSを運転する筆者、マット・プライヤー

女優のジュディ・デンチ氏演じる「M」は、ジャガーに乗っていた。もちろん架空の人物で、リアシートに座っていたけれど。2012年の「007スカイフォール」では、ジェームズ・ボンドとMが、ジャガーからアストン マーティンへ乗り換えるシーンがあった。

フォード傘下だった時代には、ジャガーとアストン マーティンは近い距離にあるブランドだった。今日の筆者は、XFから乗り換えるつもりはないが。

法と民主主義の中心地に存在する、巨大な秘密組織。居心地が悪くなり、筆者は高速道路のM40号線へ入る。北西へ進み、一般道へ。カーブが連続する道を運転していると、XFが愛おしく感じる理由が見えてくる。

明らかに、グレートブリテン島特有の道路を中心に開発されたサルーンだからだ。全長は4962mm、全幅は1890mmという大柄だが、ステアリングは正確で、シャシーは敏捷。実際には、数字ほど大きく感じることはない。

数年前に英国価格は改められ、試乗車は4万1265ポンド(825万円)。サイズ的に競合するのはBMW 5シリーズでも、予算では3シリーズへ近い。コストパフォーマンスも素晴らしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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