遂に「楽しい」電動スポーツ生誕! ロー&ワイドなボディにシザーズドア 新MGサイバースターへ試乗 

公開 : 2024.06.27 19:05

全開時は一瞬混乱するほど強力なGT 

インテリアの洗練度は高く、センターコンソールには、車両の設定やエアコンを操作するタッチモニター。ドライバー正面にはメーター用モニターがあり、その両脇にも小さなタッチモニターが並ぶ。

左側はナビやオーデイオ用で、右側はそれ以外の車載機能用。ただし、ステアリングホイールの角度を調整しても、両脇のタッチモニターは大部分がリムに隠れてしまう。

MGサイバースター GT(英国仕様)
MGサイバースター GT(英国仕様)

市場の好みに合わせ、モニターへ表示されるグラフィックは、過度なアニメーションが省かれた。インフォテインメントの使いやすさは改善され、歩行者への近接警告音も落ち着いたものになった。

シートには合成皮革が張られ、座り心地は称賛したいレベル。傷んだ公道を4時間ほど運転したが、身体がこることはなかった。

公道へ出てみれば、サイバースター GTの運転のしやすさへ感心する。1984kgある車重から想像する以上に。試乗したグレートブリテン島北部のハイランド地方へ広がる公道を、素晴らしく安定して駆け回ってみせた。

コンフォート・モードでは、息が詰まるような加速の鋭さは抑えられる。スーパースポーツ・モードを選ぶと、全パワーが召喚される。このモードは、右側のパドルで切り替え可能。左側のパドルでは、回生ブレーキの強さを3段階から選べる。

1つ下のスポーツ・モードでも、一瞬混乱してしまうほどパワフル。トラック・モードはそれ以上で、公道での選択は慎重に判断した方がいい。

アウディのように安定 後輪駆動は一層秀逸

サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式で、リアが5リンク式。しなやかにタイヤは上下動し、柔らかすぎず硬すぎない。高速でコーナーへ侵入しても、ボディロールは最小限。舗装の剥がれた穴も、気に留める必要はなかった。

重心位置が低く、四輪駆動で、有能なタイヤを履くサイバースターGTはピタリと安定。カーブへ積極的に飛び込み、一気にパワーを展開しても、まったく動ぜず素早く旋回していく。脱出加速も極めて鋭い。

MGサイバースター GT(英国仕様)
MGサイバースター GT(英国仕様)

足取りが安定していて、旋回時のバランスはニュートラル。スポーツカーというより、グランドツアラー的ともいえる。前後の重量配分は、50:50だ。アウディTTSの印象にも近いとも感じたが、乗り心地はこちらの方がいい。

ステアリングホイールへ伝わる感触は薄いが、反応は正確。パワートレインはコンフォート、ステアリングはスポーツという組み合わせが筆者好みだった。また、4気筒エンジンと宇宙船のノイズを融合したような人工音も再生でき、意外と好印象だった。

そして、後輪駆動のサイバースター・トロフィーはさらに秀逸。車重は100kg軽く、一層機敏で、後輪駆動らしい自由度がある。コーナーでは荷重の変化や、リアタイヤが僅かにスライドする様子を感じ取れる。とにかく楽しい。

今回の電費は、積極的に運転したこともあり、平均で4.0km/kWh。それでも、320km程度の航続距離は得られる計算。丁寧に運転すれば、400km以上は1度の充電で走れるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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