【新時代のイタリアンエレガンス】 マセラティ・グランカブリオに現地試乗 楽しくないはずがない

公開 : 2024.06.29 07:00

エピキュリアンで賢く、いい意味で生活感があると感じた新型マセラティ・グランカブリオの現地試乗をレポート。試乗コースは北イタリアの湖畔リゾートからアルプスのワインディングロードにかけて。幸い好天に恵まれました。

リュクスなカブリオに求められる資質とは

一年を通じてもっとも太陽の長い時期に、北イタリアの湖畔リゾートからアルプスのワインディングロードにかけて、マセラティの新しいグランカブリオに試乗してきた。

現地に着く前からもう、エクスペリエンスとして天気にさえ恵まれれば人生でも指折りのドライブ体験となるであろうことは、たやすく想像のつくところだ。

マセラティ新型グランカブリオ試乗
マセラティ新型グランカブリオ試乗    マセラティ

ところが天候不順の欧州では北イタリアも荒れ模様で、前日に他国のジャーナリストが豪雨の中で走っていると聞いて同情したが、幸いにも翌日の我らが本番は快晴に恵まれた。

当然ソフトトップのオープンカーは天気に左右される。幌を下ろして走る「ハレ」の瞬間に最適化されているとはいえ、閉めている「ケ」の平時にも快適性や密閉感、もっといえば守られ感が損なわれるようでは、今日のカブリオとして選ばれる資格をたちまち失う。

結論からいえば、太陽光が眩しくて試乗のラスト1/3は幌を閉めたものの、新しいマセラティ・グランカブリオは尻上がりに好印象を増した。どういうことか、説明していこう。

まず欧州発表値のサイズ、全長4966×全幅1957×全高1365mmは、日本上陸済みで先行するクーペ版の4965×1955×1410mmとは、水平方向は計測時の誤差といっていい。

クローズ時に55mmも低く、どの角度から眺めてもミニマムな幌のルーフは電動開閉式で、50km/h以下なら約15秒で開閉可だ。指でタップしてスワイプ&ホールドか、オプションでジェスチャーコントロールも設定できる。もうひとつグランカブリオ独自の装備として、フロントシートにはネックウォーマーも備わる。

快適性を担保するために練り込まれた造り

クーペと比べて内装で異なるのは、ルーフ開閉のようなグランカブリオ特有の機能だけではない。

オプションとはいえソナス・ファベールの計16個のスピーカーによるオーディオシステムのうち、サブウーファーはコンパートメント埋込ではなくリアシート2座の間に挟み込まれ、「フレッシュエア」テクノロジーというオープントップ用の独自チューニングが施されている。

マセラティ新型グランカブリオ試乗
マセラティ新型グランカブリオ試乗    マセラティ

ボディパネルでクーペと共通するのは車体前半分とドアパネルぐらいで、Aピラーそしてルーフ電動開閉システムを収めるリア周りは、まったく別仕立てだ。

外から見えないアンテナを収めるリアのトランクリッドだけがグラスファイバー・コンポジット製で、パネル類はほぼアルミ。グリーンハウス周りは超高張スチールでフロア周りもアルミで強化されている。かくしてボディ剛性面では補強を図りつつも車重増は+約100kgに抑えた。

トランク収納スペースは幌収納のため天地方向は短いものの、ミニマム131L、最大172L。これはクーペの約55%にあたる大きさで、ゴルフバッグ×2個は何とか収められそうだ。

プレチャンバー燃焼機構を備える2992ccのV6ツインターボ、550ps仕様のネットゥーノをフロントミドに積む点も、クーペとまったく変わらず。ただいざ幌を下ろして走り出すと、気筒休止中であろう速度域でも、エンジンの響きがごく近く感じられる。

前後ウィンドウを上げたままの状態なら、外界と繋がりつつも車内の会話はよく通る。ドライブモードをコンフォートかGTに入れて市街地をクルーズする限り、グランカブリオは穏やかなパレードカーだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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