【新時代のイタリアンエレガンス】 マセラティ・グランカブリオに現地試乗 楽しくないはずがない

公開 : 2024.06.29 07:00

汗をかくにも涼し気なイタリアン・エレガンス

ただしワインディングでアレグロのリズムで駆けだすと、グランカブリオはガラリと趣を異にする。狭い峠道で手に余るどころか、操舵に対して手の内に収まるような軽快さでふるまい始める。ミズスマシ的な平行移動ではなく、姿勢変化を感じさせて曲がっていくタイプのハンドリングだから、楽しくないはずがない。

それにしても66.28kg-m/550psというアウトプットは他のスポーツカーブランドならV8相当だが、ネットゥーノは2気筒少ない分だけ鼻先が軽く、プレチャンバー機構によって高回転まで伸びる心地よさも味わえる。オープンでグランカブリオを操る快楽に、かくして乗り手は徐々に絡めとられていく。

マセラティ新型グランカブリオ試乗
マセラティ新型グランカブリオ試乗    マセラティ

低速コーナーか発進時以外にフロント駆動配分されないAWDで、ナチュラルな後輪駆動フィールやハンドリングを保つため、フロントのトラクションはスパイスより下味として時々、引っ張ってくれる程度。

ドライ路面の公道ならほぼFRだ。51;49という前後重量バランスの良さ、強靭なボディ剛性に加え、VDCMというマセラティ独自の、ヴィークルダイナミクスを統合コントロールするプログラムの賢さによるものだろう。

高速巡航ではリアシート2座を塞ぐ格好になるが、事前にトランクから折畳み式ウインドウストッパーをとり出して装着すれば、巻き込み風は巧みに抑えられ、前席で会話が続けられるほど。ルーフを閉めて走ってもみたが、頭上スペースに圧迫感はなく、遮音や断熱もしっかりした手応えの幌で、室内の密閉感は体感上、クーペの0.5段落ち程度で済む。

グラントゥーリズモ・トロフェオの2998万円~に対して、日本では3120万円~の価格が設定されているが、この価格差ならカブリオにしない手はない。そう思わせる高い完成度と、圧倒的にエレガントな世界観を備えた一台といえる。

試乗車のスペック

全長×全幅×全高:4966×1957×1365mm
ホイールベース:2929mm
最高速度:316km/h
0-100km/h加速:3.6秒
駆動方式:AWD
車両重量:1958kg
パワートレイン:V型6気筒DOHC2992cc+ツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6500rpm
最大トルク:66.28kg-m/2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ:265/30ZR20(フロント)295/30ZR21(リア)

マセラティ新型グランカブリオ試乗
マセラティ新型グランカブリオ試乗    マセラティ

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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