【時間をかけて開発する意味】 BMWアルピナB4 GT リムジンとグランクーペ、個性の違いはどこにある?

公開 : 2024.06.28 20:05

発表されたばかりのBMWアルピナB3GTとB4GTをドライブするため、日本からひとりでドイツを訪ねた吉田拓生。B4 GTに乗ってサーキットだからこそ実感できたリムジンとグランクーペの違いを述べています。

B4 GTはフロント側、1段階

6月13日にドイツのザッセンリンクサーキットで開催されたアルピナの国際試乗会。今回はグランクーペ・ボディを纏ったB4 GTの印象について触れてみたい。

GT化の視覚的なメニューはB3 GTと同様である。フロントスポイラーの端にカナードを追加。リア・ディフューザーも新デザインに変更されている。ダイヤモンドカットが施された20インチの鍛造ホイールやリアのエンブレムにはオロ・テクニコと呼ばれるピンクゴールドのような特別色が用いられている。

ドイツ本国試乗 BMWアルピナB4 GT
ドイツ本国試乗 BMWアルピナB4 GT    アルピナ

だがアルピナといえば気になるのは中身の部分。B3 GTとB4 GTにはリムジンと4ドアクーペというボディ形式の違い以上のものがあるのだろうか、アンドレアス・ボーフェンジーペン社長に聞いてみた。

「B4はBEVのi4との関係性もあって、もともとフロアがB3よりも強いんです。だから我々は今回のB4 GTにもB5用の1サイズ大きなタイヤセットを組み合わせています」との答え。それはどのようなチューンなのか?

「アルピナらしい、つまり快適に走り続けられるクルマということです。でもそこに走る楽しさが込められている。でなければ我々が時間をかけて開発する意味がありません」

今回B4からB4 GTへの具体的な仕様の変更を問うと、エンジニアのトビアス・ウィーガーはフロントのスタビを一段階細くしているという。それが意味するところは?

走りのメリハリに集約されるB4 GTの真価

「フロントサスペンションを動きやすくすることで応答性を上げました。これはタイヤの性格との関係で、そうした方がベストだということになったからです。サーキットではB4 GTの方が楽しめるはずです」

トビアスの最後の一言は、走りはじめてすぐに理解できた。コーナーの立ちあがりでスロットルを踏むとすぐに電制デフの締結が高まり、285サイズのリアがグッと踏ん張って存在感を高めてくる。

ドイツ本国試乗 BMWアルピナB4 GT
ドイツ本国試乗 BMWアルピナB4 GT    アルピナ

265サイズのリアを履くB3 GTではバランス型、AWD的だった前後の駆動力の関係性がはっきりとリア偏重、つまりFR的に感じられるのだ。

エンジンが529psまでパワーアップを果たし、しかもリア偏重というとプッシュアンダーを想像してしまうが、その過渡特性を穏やかにするのが柔らかくなったスタビとBMWの風洞で効果を確認しているというカナードなのだろう。結果としてB3 GTと比べ、走りに自然とメリハリがついていく感じになる。

走りながら「今なら踏める!」というコーナー脱出のスイートスポットをクルマがはっきりと教えてくれるのだ。それはハンドリング特性だけでなく、現状をドライバーに伝える能力との相乗効果でもある。

以前、公道でB4グランクーペを試乗した際も、B3と比べ車輛がひと回り大きいような雰囲気は感じていた。だが今回、サーキットで新型を試したことで両者の個性をよりはっきりと理解することができたのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。BMW 318iコンパクト(E46)/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

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    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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