【吉と出るか凶と出るか】 メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス 「ロクサン」を名乗る4気筒

公開 : 2024.07.02 17:45

ダウンサイジングもここまで来ました。最新C 63に搭載されるのはV8から気筒半減した2Lの直4ですが、PHEVされたことでパワーは充分。では皆が想像するC 63の魅力はどうなっているのでしょうか?

ドラッグスターの資格はあるか?

C63と聞くと「あぁ、恐竜か」となる。それぐらい、この車名に対するイメージは出来上がっている。

V8スーパーチャージドのパワーをリア2輪で路面に伝えるドラッグスター。そもそも63とか6.3はメルセデスが放つ伝統的なモンスターの称号である。

メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス試乗
メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス試乗

昨年の終わりごろその新型が発表され、スペックを見て驚かされた。その心臓はなんと2L直4ターボだという。ダウンサイジングもとうとうここまで来たか! というかそれでもまだ“ロクサン”とか名乗るんだ、というのが第一印象。

だがエンジン単体で476ps! そこにプラグインハイブリッドシステムが加わってシステム最高出力は680ps、最大トルクは104.01kg-mにもなるという。

とくれば駆動は当然AWD。しかもターボは電動システムが追加されており、モーターはリアデフ廻りに2段変速ユニットとともに収められている。

さらに後輪操舵、もちろん連続可変式ダンパーも。現在詰め込める弾は全て装填した! という感じだろうか。

メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス。賑々しい車名に相応しいモンスターかもしれない。現代車はピストンの数だけでは語れないのである。

気になったのは駆動用バッテリーが6.1kWしかないこと。これだとEV走行可能距離は15kmしかない。というかこのクルマのキャラを考えれば、この電力は静かに走るためではなく全開加速を助けるためにあるはず。でも何回か加速しただけでカラになりそう。

積極回生、瞬時開放、電動捌きはお見事

走り出しはもちろん電動だ。パワーと重みが一瞬だけぶつかって、すぐにパワーが勝つ。いったん動き出すと、そこから先の身のこなしは思ったよりも軽かった。

車重が2160kgもあることを考えればすごいことだ。例えばこれは、SクラスのAWDモデルとほぼ同じ。そして普通のCクラス、例えばC 220 dと比べれば380kgも重いのだから。

メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス試乗
メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス試乗

モーターで走り出した後、エンジンが始動し電動ターボも立ち上がる。いよいよ排気スピードが高まってエンジンとモーターでパワー全開。

そこに9速AT+モーターの2段変速も入り混じる。C 63 SEの加速は複雑なプロセスを踏んでいるはずだが、その様子を感知することは難しい。不意にスロットルを開けても、しっとりパワフルに加速してくれる。

しかも回生が積極的に行われており、バッテリー残量を気にしなくていい点も感心させられた。電力から先にどんどん使ってしまうような設定のPHEVシステムではないのだ。

高速道路の合流で踏むと、スピードメーターの針が一気に跳ねあがる。それでも歴代の“恐竜”のような今にもテールを振り出しそうな切迫感はない。静かにしなやかに突き進む感じ。

足回りもそれなり硬いはずだが、ストロークし始めの柔らかさとボディの減衰の良さが相まって、荒っぽくない。ただただドイツ製の凄いクルマに乗っている! という充足感。例えば初代の500Eのような感じ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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