先進機能が凝縮! 悩みも多し? メルセデス・ベンツSL(R230) UK版中古車ガイド(1) 怪物級なブラックも

公開 : 2024.07.20 17:45

スマートなボディに当時の先端技術が凝縮された、R230型の5代目SL 近年はブランドマニアからの注目度は上昇中 3.0L V6から6.0L V12まで モンスターのブラックも 英編集部が魅力を振り返る

優雅なボディに先進的な機能を凝縮

5代目SLの構想は、1996年に練られ始めた。目指されたのは、従来以上の軽さと速さ、実用性。当時のポルシェ911、996型より車重は約400kg重く仕上がったものの、2001年に魅力的なグランドツアラーが誕生した。

スタイリングを描き出したのは、ピーター・ファイファー氏が率いたデザインチーム。4代目より曲面的になり、優雅になったフォルムは空気抵抗も小さく、Cd値は0.29に抑えられていた。

メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)
メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

メルセデス・ベンツのフラッグシップとして、ボディの内側には先進的な機能を凝縮。その筆頭といえたのが、物理的にペダルと繋がっていない、バイワイヤ方式のブレーキだろう。センソトロニック・ブレーキシステム (SBS) と名付けられていた。

電気的に制御することで、重量を軽減。サスペンションと連動させ、タイヤ毎に独立して制動力を生み出すことを可能としていた。複雑が故に、英国ではリコールの対象にもなったが。

ABCと略された、アクティブ・ボディコントロールも新技術。スプリングとタンパー、油圧サーボを組み合わせ、数ミリ秒で減衰力を変化させることで、ボディロールを相殺させた。乗り心地の硬軟も、任意に選ぶことができた。

フォールディング・ハードトップのヴァリオルーフも、5代目に登場している。11本の油圧シリンダーを駆使し、16秒という短時間で滑らかに開閉。パノラミック・ガラスルーフを組むこともできた。

V6からV12まで モンスターのブラックも

低く滑らかなボンネット内には、多様なエンジンが収まった。大排気量に対する税制が厳しい市場を想定し、当初の320に加えて、遅れながらも2007年にSL 280が登場。追ってSL 300も登場しているが、生産数は少ない。

売れ筋となったのは、SL 350と500。特に前者は、充実した装備の割に手頃な価格で、より多い支持を集めた。

メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)
メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

圧倒的なパワーを求める富裕層向けには、V型12気筒ツインターボを搭載したSL 600を用意。AMG謹製のV8エンジンやV12エンジンも選択可能で、SL 65 ブラックエディションという、専用ボディキットとホイールで武装したモンスターもあった。

コクピットは、極めて心地いい空間。トリムグレードは4種類から選べ、レザーは2種類、カラーは5色を設定。ウォルナットやアッシュベニアなど、上品なウッドパネルも好ましい。エアバッグのほか、横転時に飛び出すロールオーバー・バーも備わる。

シートはヒーターだけでなく、クーラーとマッサージ機能を内蔵。後期型には、ヘッドレストから温風の出るエアスカーフも装備する。+2のリアシートはなく、収納空間になっている。

その頃のAUTOCARでは、巧妙にギアを選ぶATと、シャープで正確なステアリングを絶賛。「高度な技術が、カーブでのボディロールを許さない」。と特徴に触れている。

最先端の技術を融合させ、スポーティなコーナリングと、高級サルーンへ匹敵する乗り心地を実現したR230型。サーキットを走ることも、大陸を横断することも得意分野といえる、卓越したメルセデス・ベンツだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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