「ピーキー」な1.6Lツインカム フォード・エスコート Mk1 サファリラリー(2) タイトすぎたペダル

公開 : 2024.07.21 17:46

ペダルがタイトで普通の靴では運転できない

マグネシウム製のオイルパン・ガードも、本来は鉄板で保護されていたが、省かれている。「未塗装で簡単に傷が付き、すぐに錆びるんですよ」

車内を縦断していたオイルラインも違う。オリジナルでは金属とゴムを繋ぎ合わせた配管が、助手席のシートレール部分を通っていた。しかし、一体のゴム製ホースに置き換わっている。

フォード・エスコート Mk1 ツインカム・サファリラリーと、オーナーのニール・ロビンソン氏
フォード・エスコート Mk1 ツインカム・サファリラリーと、オーナーのニール・ロビンソン氏

「接合部が壊れたら、助手席の人へ深刻な怪我を与える可能性があります。内装とエンジンもダメになります。リスクを犯す必要はありません」

2021年までに、ツインカム・サファリラリーへ16年を費やしたロビンソンだったが、ロンドンのクラシック・モーターショーにはトレーラーで輸送した。「完全に運転を習得するまで、誰も助手席には乗せませんでした。正直、最初は怖かったです」

ZF社製の5速マニュアルを組むため、トランスミッション・トンネルはハンマーで叩いて加工されていた。それが、高身長の彼に深刻な問題を生んでいた。175cm程度だったマキネンは、平気だったのかもしれないが。

「ペダルの位置がタイトだったんです。普通の靴では運転できないくらい」。最終的にワトキンスの手で、ペダルの間隔は広げられた。過激なラリー仕様だったプラグとキャブレター・ジェットも、公道を前提とした仕様へ交換された。

現在は、だいぶ運転しやすい状態にあるようだ。クラッチは重すぎない。1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンのシフトレバーも扱いやすい。

次は1300スポーツのクラブマンレーサー

油温が上昇するまで、回転数は7000rpm以下を保つよう告げられる。ところが、トランスミッションには極端にショートなギアが組まれ、ツインカム・エンジンはピーキー。4000rpm以下ではトルクが細く、あっという間に8500rpmまで吹け上がる。

実際に守ることは簡単ではない。それでも、5速は長距離のサファリラリーに備え、オーバードライブでロング。運転に慣れたロビンソンは、自走でクラシックカー・イベントに向かい、お気に入りの峠道を楽しんでいるという。

フォード・エスコート Mk1 ツインカム・サファリラリーと、オーナーのニール・ロビンソン氏
フォード・エスコート Mk1 ツインカム・サファリラリーと、オーナーのニール・ロビンソン氏

排気音はドライでスリリング。ステアリングはダイレクト。気持ち良くカーブを旋回できる。タイヤはブロックパターンで、舗装路でのグリップ力は限定的。乗り心地は驚くほど滑らかだ。

専用のサスペンションと、軽くない車重が影響している。「フォードは軽量化しています。オーバーフェンダーはアルミで、ボンネットとトランクリッドはFRP。ホイールはマグネシウムなんですよ」

「それでも、スペアタイヤ2本と、巨大な燃料タンク、大きな金属製バンパーバーが付いていますからね。通常より150kgは重いでしょう」

ツインカム・サファリラリーの仕上がりに納得したロビンソンは、若い頃に叔父さんから譲り受けたエスコート 1300スポーツのレストアを始めた。当時のクラブマンレーサー風に仕上げるつもりだという。

このクルマこそ、彼が徹底的なエスコート・マニアになるきっかけを作った1台。ワークスマシンの復元には成功している。恐らく、今回は18年間も費やすことはないだろう。

協力:ニール・ロビンソン氏、デイブ・ワトキンス氏、デニス・チック氏、オーウェン・ヘンダーソン・ハミルトン氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォード・エスコート Mk1 サファリラリーの前後関係

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