装備を削った「コビッドカー」が海外で問題に 半導体不足で仕様変更、中古車に影響

公開 : 2024.07.08 18:05

英国で「コビッドカー」と呼ばれるクルマが中古車市場に影響を与えている。一部メーカーは新型コロナの影響でやむを得ず装備を簡略化したが、詳細データが残されていないケースもあり混乱が生じている。

本来と違う仕様で出回る データ共有されず

4年前に感染拡大が始まった新型コロナ(Covid-19)だが、その影響で当時販売された新車の一部で装備や仕様が簡略化されていたことから、現在の中古車市場に混乱が生じている。

英国では、販売業者や購入者が装備の違いに気づかず、不適切な価格設定で売買するというケースが報告されている。クルマにおける “副作用” と言えるかもしれない。

新型コロナの影響で仕様が変わったクルマを英国では「コビッドカー」と呼んでいる。
新型コロナの影響で仕様が変わったクルマを英国では「コビッドカー」と呼んでいる。

こうした中古車は英国で「コビッドカー(Covid cars)」などと呼ばれ、主に2020年と2021年の部品不足の影響を受けている。特に半導体は、シートヒーターから携帯電話用のワイヤレス充電器まで、あらゆるものの頭脳となる部品であるが、IT業界や電子機器関連で需要が急増したため入手困難になった。

半導体の供給制限を受け、一部の自動車メーカーは複数の機能を省略せざるを得なくなった。ワイヤレス充電器、インフォテインメント・タッチスクリーン、ヘッドアップ・ディスプレイ、ナビ、アンビエントライト、電動シートなどが欠落した。

当時の専門家たちは、このようなクルマが2年以内に中古車市場に出回る可能性を指摘していた。その予測は的中し、中古車ディーラーやトレーダーはいわゆるコビッドカーを取り扱うようになったが、一部でメーカー公式仕様書とは異なる仕様の車両に直面しているという。

この問題を調査するために2つの作業部会を立ち上げた英国の自動車リマーケティング協会(VRA)のマーカス・ブレークモア氏は、次のように語っている。

「(省かれた装備には)シートヒーター、ヘッドアップ・ディスプレイ、電動格納ミラー、電動シート、キーなどが含まれます。アナログのメーターや時計、本来よりも小さいホイールを装着したクルマもありました」

「フランチャイズ・ディーラーの話では、データベースと照合しても存在しない仕様のクルマがあるといいます」

ブレークモア氏によれば、自動車メーカーのデータが不足しているため、中古車業界で特定のクルマの価値を正確に評価することが難しいのだという。

「自動車メーカーでさえ、自分たちが何を送り出したのかを知らないのであれば、中古車業界の仕事は非常に難しくなります」

新車・中古車の価格情報などを取り扱うCap HPI社の予測戦略責任者、ディラン・セターフィールド氏は当時を振り返り、「弊社の新車データチームは、メーカーから毎日のように仕様変更について連絡を受けていました」と話す。

「その都度、仕様変更が車両の査定に影響を与えるかどうかを判断し、新しいIDを作成しました。しかし、短期間しか販売されなかった一部の車種については、メーカーが詳細な記録を残していない可能性があるようです」

「また、 “〇〇エディション” など同じような名称のグレードや仕様車があっても、その中身はまったく異なるということもあります。ディーラーや消費者は注意しなければなりません」

一方、ディーラーがクルマの説明をうっかり間違えてしまい、不満を抱いた購入者から返品を求められるというケースもあるようだ。

「多くの在庫がディーラーやトレーダーによって “盲目的” に購入されているため、多くの人がコビッドカーを購入したことに気づかないのです。誤った説明など誰も望んでいません」

記事に関わった人々

  • ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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