ルノー・ルーテシア・ゼン 0.9ℓ

公開 : 2015.01.03 23:50  更新 : 2022.12.12 21:30

外観上のゼン1.2との違いは、ホイールがシルバーから黒に、サイドとバックのドアにクロームのモールが入って、悟りの境地となっていること。現時点ではゼン0.9のほうがむしろ高級仕立てだけれど、じつはゼン1.2も早晩、同じ仕様になる。

■どんな感じ?

センターコンソールの左の隅っこにあるエンジン・スターターを押すと、当然のことながら3気筒は一発で目覚める。たいへん静かで、アイドリング時にヘンな振動がある、というようなことはない。5MTのギアボックスはゲートが明確で、操作しやすいし、クラッチのつながりも明瞭で、なんなくスタートできる。0.9ℓという小排気量ながら、極低速トルクに不満はない。車重は1130kgと、4気筒のゼン1.2より大人1分、60㎏軽く仕上がっている。

ステアリング系はしっかりしており、特にスポーティというわけではないけれど、クルマとのつながり感がある。この点、同クラスの日産車と大いに異なる。わざと差別化しているのかもしれない……。

2000rpmにはすぐに到達し、ターボが効き始めるとトルキーで、グイグイ前輪が引っ張ってくれる。高回転まで回すと、ビーンという3気筒特有の、軽自動車でもおなじみの軽快なサウンドを控えめに発する。今回の試乗は街乗り限定ながら、静粛性は高い。195/55R16サイズのミシュラン・エナジー・セイバーを履く乗り心地は、ごくフツーに快適で、こういうフツーな快適さというものこそ、いまもって日本車にはないものであるかもしれない。

少しばかり気になったのは、たとえば2速でアクセルを全開にし、エンジンがトルクをモリモリ発揮した直後に、パッと右足をペダルから放すと、若干ギクシャクすることだ。このあたりに3気筒ターボのデメリットがあるのかもしれない。この種のクルマをお求めのかたは、こういうクセをクセとして理解し楽しむことができる人たちだろうとは思うけれど、そういう現象があったことをお伝えしておきたい。「エコ・モード」にすると、暖簾に腕押し状態で、一瞬手応えというか足応えがなくなる。ちょっと待つと、ちゃんと走っていることがわかる。トルクが制限されるせいか、ギクシャクはしなくなる。なにしろMTなので、パワーがなければ、パワーがないことがヴィヴィッドに感じられて、それなりに楽しむことができる。クルマとドライバーがフツーにつながっている。それがヨーロッパ車の美点である。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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