F87型からの「明確な進化」を体感! BMW M2 長期テスト(2) CLARが生む動的な熟成度

公開 : 2024.07.14 09:45

M謹製の直列6気筒ターボを積んだ稀代のコンパクト・クーペ、M2 ひと回り拡大した正統派モデル あえて売れ筋のATを選択 普段使いの印象は? 英国編集部が長期テストで完成度を確認

積算7584km M2が来て早起きする日が増えた

BMW M2が長期テストでやって来てから、早起きする日が多くなった。交通量の少ない道を走りたいから。M2には、聴き応えのあるサウンドを控えめにするモードが付いている。まだ眠っているご近所さんのために。

しかし、モード次第ではデフォルトで爆音にもできる。スタートボタンを押すと、大げさなほど回転数を高めて直6エンジンが目覚める。設定したことを忘れていると、宵越しの不良少年のようになってしまう。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

積算7725km F87型からしっかり進化したG87型

確かに、G87型のBMW M2には指摘すべき弱点がある。乗り心地はあまり良くない。スタイリングも、先代以上にカッコイイとはいえないだろう。車重は230kgも増えた。全長は約120mmも長くなった。

それでも、BMWは目的を達成したといえる。F87型からしっかり進化している。それを再確認するため、今回は筆者、ジョナサン・ブライスがカギをお借りした。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

ボディの見た目は、主観を排除し判断すれば、失敗とはいえない。写真以上に、実写を目の当たりにするとバランスは良い。BMWにしか見えないし、ライバルより新鮮さは長く続くように思う。部分的に、凝り過ぎなディティールはあるとしても。

スリムなライト類を除いて、F87型からの流れを組んだ、保守的なスタイリングでまとめることもできたはず。だがBMWは安全パイを取らなかった。

評価に値する燃費 路面を問わず高い安定感

実際の走りに関しては、出発する前は期待と不安が入り混じっていた。初日は生憎の大雨。ちょうどラッシュアワーにも重なった。最高出力459psを発揮するFRのクーペで、200km先のドニントンパーク・サーキットを目指すのに、好条件とはいえなかった。

しかし、走り出してすぐに不安は蒸発した。交通量が多く、雨が降る高速道路の長距離移動でも、最後まで快適。1度の満タンで、往復400km以上の旅をこなしてくれた。

BMW M2 クーペと、BMW 2シリーズ・クーペ
BMW M2 クーペと、BMW 2シリーズ・クーペ

燃費は平均で10.3km/Lと、2桁に届いた。特に、右足を控えめに倒していたわけではない。むしろ、ZF社製の8速ATを駆使し、56.0kg-m/2650-5870rpmという最大トルクを味わった場面もあったほど。

M2は、公道では出し切れない最高出力を秘めた、3.0L直列6気筒ターボエンジンのスポーツカーだ。10.0km/L以上の効率は、評価に値するだろう。

路面を問わず、安定感が高いことも特筆すべき点。積極的に運転しても、落ち着きは乱さない。これ以上のパワーやサイズが本当に必要なのか、疑問に思えたほど。

視界が浅くなるような激しい雷雨でアスファルトが濡れても、機敏な身のこなしは変わらず。スピンするような気配はなかった。

この落ち着きを生んでいる理由は、ひと回り大きいM4と共有する、CLARプラットフォームを基礎骨格とすること。動的な熟成度は高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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