この問題に対する解決策として振動を相殺するためのフライホイールを装着したり、エンジンの両サイドにプーリーを組み合わせ、よじれを低減しようとするのがフォードの解決策。対するヴォグゾールは他メーカー同様にバランス・シャフトを取り込んだ。

双方の解決策はもちろんうまく機能しており、ここにある5機のエンジンも模範的な仕事をしてくれる。しかし、なかでもBMWのエンジンはその他を差し置いて、もっとも静かかつスムーズなものとなっている。

追い越し加速でも、コーナリング時でも、どんなシチュエーションでもその洗練性が損なわれることはまったくない。たとえば3速のまま5000rpmまで引っ張ったとしても、息切れすることなく滑らかに回りつづけるのだ。

5台のなかでもっとも大きな排気量を持ちながら、加給圧を限界まで下げることによって内在的なアドバンテージを紡ぎだしている印象だ。おそらく誰が乗っても、BMW製ユニットの完成度の高さに驚かされることになるだろう。

またマニュアル・ギアボックスがダウンシフトする際に回転数を自動で合わせてくれるシンクロ・レヴ・マッチ機能を携えているおかげで扱いやすさはかなりのもの。相対的なマナー向上に大きく役立っている。

フォード製エコブーストはBMWほど静かではないけれど、かといって煩くがなり立てるようなものではない。高回転域における非常に滑らかなフィールは、ヴォグゾールの1.0ユニットの存在を霞ませることは間違いない。

ヴォグゾール製ユニットも低回転域付近では静かで楽しいのは間違いないが、上まで回した時の柔軟性はやはりここでも看取できなかった。

ルノー・トゥインゴとプジョー308の印象はあまり芳しいものではなく、低速域ではやや荒々しく落ち着きがないと感じた次第。なかでもプジョーは、スタート-ストップ・システムが作動するタイミングで不快な振動を与えることが度々見受けられた。

これに加えて2500rpm以下ではざらついた印象が拭えず、もちろん回転が増していけば幾分スムーズにはなるのだが、かといって静かになるわけではなく、むしろエンジンから聞こえる騒音が増していったのは減点対象。

フォードのようにスポーティなキャラクターを際立たせているところまで非難するつもりはないけれど、シリンダーが3つしかない分、落ち着きの面に期待すればするほど残念な気持ちになってしまった。

結論

テスト2日目の昼下がり。道路が雨にぬれたウェールズの険しい峠道を通って、終点のハムズ・ホール工場まで5台を走らせる。

ここまでで明らかになったのは、5機中2機が優れたエンジンであるということ。そのうちの1機がルノー製898cc TCEエンジンということだ。

パワー、トルクともに不満はなく、トゥインゴの身軽さと相まってとても良い仕事をしてくれる。燃費や航続可能距離にも問題は見当たらず、総じて好印象だ。もちろん3気筒エンジンを搭載していることは耳からも明らかなのだが、それでも完成度の高さの方が目立っている。

これに対してヴォグゾール製1.0 SGEと、プジョー製1.2 e-THPピュアテックは、いかに3気筒エンジンのチューニングが難しく、ドライバーを魅了することがハードルが高いかを物語る結果となった。

ただし、ヴォグゾールのエンジンは経済性と扱いやすさを再優先するユーザーには受け入れられやすいのではないかという見方もできる。4000rpmより回さず、そしてその上の回転域を恋しく思わないならば、これはこれで良いエンジンである。

またプジョーのエンジンも、平凡な経済性とレスポンス、洗練性に目を瞑りさえすれば、ドライバーを楽しませてくれることは間違いない。(いづれも3気筒に期待される重要な要素ではあるけれど……)

残すは2機。BMW製ユニットは先述のとおり、広い範囲において卓越した完成度を誇る。ドライバーに忠実であるのはもちろんのこと、扱いやすく、力があり、たかい経済性を維持しながら、各々の連携に滑らかさがある。5機のなかで1位の称号を与えるに躊躇しない出来栄えだ。

これと同じくらい高い評価を得たのはやはりフォード製エコブースト。ランク付けをした際にエコブーストがBMWを凌ぐ結果となったのは、BMWと比肩する完成度の高さをわずか999ccという排気量で成し得たからだ。これに加えて、スピリットとでも言おうか、要するにドライバーの感情に訴える ’アツさ’ を再現していることも王手をかける。

ヨーロッパ勢も大健闘だったけれど、同時にフォード製エコブーストのレベルの高さを改めて感じることになった。仮にこれから3年が経ったとしても、この魅力は色褪せることはないだろう。

根っからの運転好きであったとしても、あるいは年間2.4万km以上走るモーターウェイ・クルーザーであったとしても、4気筒エンジンやディーゼル、ハイブリッドを差し置いて、フォード製エコブースト・ユニットを選ぶ価値は十分にある。