楽しさと完成度はクラストップ! トヨタ・ヤリス・クロスへ試乗 130馬力のHV追加で競争力強化
公開 : 2024.07.18 19:05
有能なハイブリッド 乗り心地と操縦性のバランス
さて、実際に走らせてみよう。トヨタおなじみのハイブリッド・パワートレインは、刺激に欠けるとはいえ、間違いなく有能。内燃エンジンと電気モーターが見事に協働し、滑らかに走れる。1.5Lエンジンのノイズは、高負荷時に聞こえてくるが。
e-CVTは、エンジンが不自然に高回転域まで吹け上がる、ラバーバンド感が抑えられている。基本的に、アクセルペダルを深く踏み込むまでは。130ps仕様では低域トルクが太く、エンジンの存在感はさらに控えめだ。
115ps仕様と比べて、動力性能の向上は大きくない。0-100km/h加速は、0.5秒鋭い10.7秒。気張って飛ばすより、少し速めのペースで運転している方が、余力は感じやすいだろう。駆動用モーターが効率的に働き、キビキビ走れる。
発進加速も活発。流れの速い郊外の道にも、問題なく対応できる。追い越しをかけると、エンジンが急に頑張り始めるが、速度上昇はその騒ぎに対応しない。風切り音は小さくなったようだ。
シフトセレクターをBにすると、回生ブレーキが強く働く。駆動用バッテリーの充電量も、高く保てる。
以前からTGNAプラットフォームのトヨタ車は、乗り心地と操縦性のバランスが高く評価されてきた。ヤリス・クロスも同様で、高めの車高にもかかわらず、カーブが連続する区間を驚くほど楽しませてくれる。
ステアリングは正確。レシオもスローすぎず、操る自信を抱きやすい。フロントのグリップ力は高く、バランス良く前後アクスルが荷重を分担して回頭していく感覚がある。
競合を凌駕する運転の楽しさ 高完成度の1台
操縦性の奥深さは、想像以上。小柄なサイズと相まって、一般的なドライバーが試さないような、相当に積極的な走りも実は許容してくれる。運転の楽しさは、フォード・プーマを除いて、このクラスの競合を凌駕する。
乗り心地は、16インチ・ホイールがベスト。多くの凹凸を滑らかにいなし、車内を落ち着いた空間に保ってくれる。プレミアエディションやGRスポーツは18インチを履くが、軽くないバネ下重量を抑えきれず、低速域では揺れが届く場面が増えるようだ。
燃費は、115psで19.3-22.2km/L、130psでは20.1-20.8km/Lになる。これは実環境でも達成が難しくない数字で、試乗した前輪駆動のプレミアエディションでは、積極的に運転した後での平均で、19.5km/Lが表示されていた。
コンパクト・クロスオーバー市場の戦いは熱いが、ヤリス・クロスの競争力は高いまま。燃費に優れ、レギュラーガソリンに対応していることも強みだろう。
特有の動力分割機構が好きになれない、という人もいるはず。それでも高効率で、一般的なユーザーへ運転のしやすさを提供していることは間違いない。
130psのハイブリッド・パワートレインは、環境性能を犠牲にすることなく、実世界での軽快感を高めた。装備は充実し、内装の質感も良好。2024年のアップデートを経て、優位性は一層増したといえる。完成度の最も高い1択だといっていい。
◯:調和して働くハイブリッド・パワートレイン 優れた燃費 予想外に運転を楽しめる
△:クラストップの洗練性ではない 上級グレードのお値段は高め 大径ホイールで悪化する乗り心地
トヨタ・ヤリス・クロス・プレミアエディション FWD(英国仕様)のスペック
英国価格:3万2500ポンド(約657万円)
全長:4180mm
全幅:1765mm
全高:1595mm
最高速度:175km/h
0-100km/h加速:10.7秒
燃費:20.1-20.8km/L
CO2排出量:109g/km
車両重量:1260kg
パワートレイン:直列3気筒1490cc 自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/5500rpm
最大トルク:11.8kg-m/3600-4800rpm
ギアボックス:e-CVT(前輪駆動)