実は「史上唯一」なV12ターボ+MT アストン マーティン・ヴァラーに試乗 至福の境地へ!

公開 : 2024.07.17 19:05

ヴァンテージをベースにした特別なアストン マーティン V12ツインターボ+MTのロードカーは史上唯一 しなやかな乗り心地に極上の音響 運転体験は至福の境地 英編集部が評価

V12ツインターボ+MTのロードカーは史上唯一

自動車史を振り返ると、V型12気筒ツインターボエンジンにマニュアル・トランスミッションを組み合わせたロードカーは、1つしか存在しないことがわかる。果たして、それが今回試乗したアストン マーティンだ。

生産数は110台の限定。超希少といえ、路上で目撃できるのは、真夏に雪が降るくらいの頻度かもしれない。だとしても、100万ポンド(約2億200万円)の英国価格へ納得するのは、一般的な市民には難しい。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)

実のところ、アストン マーティンDBSの方が速い。専用のカーボンファイバー製ボディやパワートレイン以上に、裕福な層でも所有している人が限られるという、特権のお値段といえる。

オマージュしたといわれるのは、1970年のDBS V8がベースで、1977年と1979年のル・マン24時間レースを戦ったレーシングカー。タイヤやブレーキ、トランスミッションなどを激しく傷めることから、マンチャー(ムシャムシャ食べる人)と呼ばれた。

ヴァラーの構造を見ていくと、フロントピラーから後ろは、基本的にヴァンテージ V8と同一。だがリアアクスルの間には、ヴァンテージ V12用の6速MTと、電子制御されないリミテッドスリップ・デフが搭載されている。

フロント側に載るのは、DBSの最終仕様として開発された、770用のV12エンジン。ただし6速MTの許容力に合わせ、最高出力は770psから715psへ、最大トルクは91.7kg-mから76.5kg-mへ、デチューンされている。

乗り心地はしなやか 極上の音響体験

主任技術者を務めたサイモン・ニュートン氏は、もう少しパワーは上げられたものの、シフトフィールは犠牲になっただろうと説明する。確かに、ヴァンテージ V12Sに載っていた7速MTの感触は、褒められるものとはいえなかった。

インテリアは、メルセデス・ベンツ由来のモニターとスイッチ類が用いられた、1世代前のアストン マーティン。内装のコーディネートは無限と表現したくなるほど多様だから、お好みで素晴らしい雰囲気に仕立てることはできる。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)

試乗車は、落ち着いた色の化粧トリムとツイード生地でコーディネート。印象的な美しさだった。

アルミホイールは、ヴァルキリーが履くものと似ているが、センターロックではない。5本のボルトで固定する。

V12エンジンは、聞き慣れた重低音を控えめに放って目覚める。走り出せば、極上の音響体験が待っている。

クラッチペダルはかなり重いのではと想像したが、非常に軽かった。ブレーキペダルやアクセルペダル、ステアリングホイールの重みづけと完全に調和している。

公道前提で、乗り心地はしなやか。変速も滑らかだ。ちなみに、サーキット前提の兄弟モデル、アストン マーティン・ヴァリアントも、38台の限定で登場する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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