実は「史上唯一」なV12ターボ+MT アストン マーティン・ヴァラーに試乗 至福の境地へ!

公開 : 2024.07.17 19:05

思いのままの操縦性 至福の境地に浸れる

シャシーは素晴らしい。ダンパーをソフト側に設定すれば、乗り心地は最高。もう少し上下動を抑えたい場合は、スポーツ・モードが丁度いい。ピタリとボディは落ち着く。

フロントノーズは重い。リミテッドスリップ・デフとの組み合わせで、アンダーステア傾向かと思いきや、まったく違う。ステアリングの反応は至って高精度。思いのままのラインを辿っていける。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)

フロントエンジン・リアドライブの高出力モデルとしては例外的に、見事なトラクションで脱出加速も鋭い。トランスアクスルのレイアウトと、しなやかなサスペンションの効果だろう。

6速MTも出色。スムーズにシフトレバーは動き、手のひらへ心地良い機械的な手応えが伝わる。ゲートも正確に選べる。唯一、2速から3速へシフトアップする時は、少し慎重に操作した方が良いようだが。

公道での運転体験は、筆者が期待していた通り。流暢なシャシーに、V12エンジンのパワーとサウンドが融合し、至福の境地に浸れる。

それでも、重箱の隅をつつくのが自動車ジャーナリストだとすれば、いくつか指摘できる部分はある。自分が開発チームの一員だとしたら、さらに踏み込んだセットアップを主張したかもしれない。

運転の楽しさを追求した特別なアストン

エンジンやシャシーのマイルドさを抑え、ステアリングとブレーキのアシストを減らし、クラッチとアクセルへ調整を加え、DBS 770級のレスポンスを得ても良かった。ファイナルレシオは、もっとショートで良さそうだ。

パワートレインのマッピングにも、手を加えたくなる。ノーマル、スポーツ、トラック(サーキット)の各モードには、今以上に大きな変化を与えるだろう。サウンドは、さらにドラマチックにしたいところ。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)

筆者は少し面倒くさがり屋だから、変速時のレブマッチング機能も欲しい。V12ツインターボエンジンのレスポンスは、自然吸気ユニットより予想しにくい。ヒール&トウでのシフトダウンが、うまく決まらない場面もありそうだ。

とはいえ、強いていえば、という程度。ハイスピードを求めたのではなく、運転の楽しさを追求した特別なアストン マーティンという仕上がりは、とびきり魅力的。ユニークな成り立ち通り、心の底から楽しめる。

もっと身近な価格で、似たようなモデルは作れないのだろうか。ペダルは、もちろん3枚欲しい。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)のスペック

英国価格:100万ポンド(約2億200万円)
全長:4599mm
全幅:1987mm
全高:1274mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1780kg
パワートレイン:V型12気筒5204cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:715ps
最大トルク:76.5kg-m
ギアボックス:6速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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