2030年に脱エンジン? 英政権交代で自動車業界は変わるか 労働党の公約は?

公開 : 2024.07.08 18:25

労働党の自動車関連マニフェスト

選挙キャンペーンで労働党が掲げていた自動車関連のマニフェストを紹介する。

2030年にエンジン車の新車販売を禁止

英国では2023年、ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止時期を2030年から2035年に延期した。労働党はこれを、従来の2030年に戻す公約を掲げている。

脱エンジンやEVインフラ整備など、労働党の公約は自動車産業にどのような影響を与えるだろうか?
脱エンジンやEVインフラ整備など、労働党の公約は自動車産業にどのような影響を与えるだろうか?

当初の計画に戻すことで自動車メーカーに「確実性」をもたらすとしている。

EV購入者の支援

EVについては、「充電ポイントの展開を加速」させることで購入者を支援するという。

充電インフラ企業のZap-Mapによると、2024年5月現在、英国には5336か所、計1万2249基の急速・超急速充電器が設置されている。

労働党は中古EV市場も視野に入れ、バッテリーの健全性基準を制定するなど、情報をより明確で分かりやすいものにするという。

EV購入時の優遇措置は約束していない。

近代的な交通システムの構築

労働党は国内道路の大規模改良を約束している。

マニフェストでは、「英国の再建とは、交通インフラの近代化を意味する」と書かれており、交通網は「長い間プロジェクトが実現されないことに悩まされてきた」としている。

日本のJAFに相当する英国王立自動車クラブ(RAC)のデータによれば、英国全土に100万個以上の「ポットホール(Pothole)」があるという。ポットホールとは路面のくぼみや穴のことで、排水不良やアスファルトの経年劣化により発生し、車両故障の原因や事故につながるとされている。

ポットホール対策の予算は、「費用対効果が悪い」とされるA27幹線道路のアランデル・バイパス工事を延期することで賄われる。

バッテリー工場の建設支援

国内のEV用バッテリー工場の建設を支援するため、15億ポンド(約3000億円)を投じると約束している。

また、環境負荷の低い水素製造プロジェクトにも5億ポンド(1000億円)を投じる予定だ。間接的に自動車産業、特に大型貨物車両(HGV)向けパワートレインの開発支援などにつながる可能性がある。

自動車産業を含む国内の研究開発部門にも資金投入を約束している。

保険料の引き下げ

労働党は「高騰」する自動車保険料に取り組むとしているが、その内容については明らかにしていない。

英国保険業者協会は以前、大幅な値上がりの背景として、部品代、修理代、代車費用、人身傷害の保険金請求の増加など、多くの要因を挙げていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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