「純粋さ」を物語る無駄ないフォルム 現存1台のディマ1100(2) モータースポーツへの相当な熱量

公開 : 2024.07.27 17:46

モータースポーツへ向けられた相当な熱量

フィアット由来の4気筒ユニットは、カムに乗るとドライな咆哮を響かせ、平坦な場所なら積極的に加速。スルスルと、200km/hまで加速していきそうな勢いがある。

3速は、緩めのカーブで有用。ところが接地面が細く、ズルズルと外側へ押し出される。ヘアピンへ突っ込むと、フロントタイヤが路面で削られるのがわかる。登り坂なら、アンダーステアは控えめになるが。

ディマ1100(DM/1951年式)
ディマ1100(DM/1951年式)

前後ともドラム式のブレーキは、予想通りの強さ。レースという条件では、心もとないだろう。カーブでシフトダウンすると、リアアクスルが悶える。加速に備えて落ち着かせるには、挙動へ集中する必要がある。

コクピットはタイト。上半身が露出するが、主要な操作系は自然な位置にある。フロントガラス越しに、盛大に空気が流れ込んでくる。レストアで得た、座り心地の良い肉厚なシートが、ドライバーの風当たりを強くしているようだ。

ボディは再塗装され、内装の一部は仕立て直された。それでも、LF-11-52は驚くほどのオリジナル状態を保っている。

もし、ポルトガルで最初のスポーツカー・メーカーになるべく、予算が割かれていなければ。1.5L以下クラスでの競争力向上のため、DMは大きく姿を変えていた可能性が高い。ポルシェ550 スパイダーのような、ミドシップになっていたかもしれない。

とはいえ、90年前のクルマ好きなポルトガル人がモータースポーツへ向けた情熱は、相当な熱量だったことは間違いない。残された1台が、それをはっきり示している。

協力:マルガリーダ・パトリシオ・コレイア氏、ペドロ・フィリペ氏、マデイラ観光局
撮影:ジョエル・アラウジョ(Joel Araujo)

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

現存1台のディマ1100の前後関係

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