「S」には以前の残り香 ロータスの電動サルーン! 新型エメヤへ試乗 総合力はタイカン以上?

公開 : 2024.07.28 19:05  更新 : 2024.08.21 09:48

驚くほど上質なインテリア 着座位置は高め

インテリアは、基本的にエレトレと同じ。新時代のロータスとして、驚くほど上質に設えられている。ダッシュボードは造形的に豊かで、テキスタイルとレザーのコーディネートは興味深い。最近の例では珍しく、本物のアルカンターラも用いられている。

例に漏れず、ダッシュボード中央には大きなタッチモニター。反応は良好で、表示は鮮明。グランドツアラーの従来的なロマンスを、引き立てるわけではないが。

ロータス・エメヤ S(欧州仕様)
ロータス・エメヤ S(欧州仕様)

センターコンソールとウインドウラインの位置は高く、車内に深く身を収めたような感覚がある。それでも、着座位置は路面から明確に高くクロスオーバー・ライク。タイカンとは明らかに異なる。

リアハッチでアクセスする荷室は床面の位置が高く、容量は509L前後とのこと。Rのリアには、ジーリー・ホールディングス製の駆動用モーターと、2速オートマティックを実装することが影響しているようだ。

ベースグレードとSのリアには、すべてのエメヤのフロント側にも積まれる、ZF社製の306psユニットが組まれる。トランスミッションも、1速リダクションになる。

さて、ブレーキペダルを踏み、シフトレバーをDに倒し発進。車内が静かで、長距離走行が得意という点では共通するが、明らかにエメヤ RよりSの方が好印象といえそうだ。

かつてのロータスの残り香があるS

Rには、アクティブ・アンチロールバーと後輪操舵システム、カーボンセラミック・ブレーキが載り、ツインチャンバーのエアサスペンションも専用設定になる。2590kgのボディをタイトに引き受けるが、走りは驚くほど異なる。

ステアリングホイールで感じる荷重、ボディロールの生成、ブレーキの直感性など、同じモデルでこれほど印象が違う例は珍しい。確かに、スーパーEVという尺度ではRが一枚うわて。しかし、Sにはかつてのロータスの残り香がある。

ロータス・エメヤ Sのステアリングホイールを握る筆者、リチャード・レーン
ロータス・エメヤ Sのステアリングホイールを握る筆者、リチャード・レーン

今回の試乗はドイツの滑らかな公道だったが、もちろん、エヴォーラのようにカーブを旋回することはない。とはいえ、操縦性ではSが強く輝く。優れた特性を理解する人によって開発されたことが、実際の動きから伝わってくる。

大型・高級の電動サルーンは、パワーと価格、技術を天秤にかけて選ばれる類のモデル。ステアリングの反応が、購入時の大きな動機になることはないとしても。

筆者の印象では、Rはやや作り込みすぎ。Sの方がトルク配分が自然で、優れたバランスを感じ取れ、コーナリングは一層滑らか。旋回中でも、落ち着いたままライン調整していける。

敏捷性ではタイカンが勝るとはいえ、スポーツカーのような軽快感すら漂う。ステアリングレシオも丁度良く、ボディロールと調和している。Sなら、思い切りアクセルペダルも倒せる。

回生ブレーキの強さは4段階。1番弱くすれば、惰性走行もできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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