【国内最速試乗】マッチョな個性派がやってきた 激戦コンパクトSUV市場に挑むスズキ「フロンクス」の実力をチェック

公開 : 2024.07.25 11:45  更新 : 2024.10.02 13:59

・インド生産の世界戦略車
・クローズドコースで先行試乗
・スズキは「個性的でユニーク」と表現

流麗さ、力強さ、先進性を併せ持つ

スズキがこの秋に発売を予定するコンパクトSUVが「フロンクス」だ。過去に販売されていた「バレーノ」と同様に、インド生産のモデルを日本で販売する。

試乗したのは日本仕様のプロトタイプであり、ボディサイズは全長×全幅×全高=3995×1765×1550mm。サイズ感は、いわゆるBセグメントで、ライバルはホンダの「WR-V」や、トヨタの「ヤリスクロス」となるだろう。

スズキ「フロンクス」の実力をチェック
スズキ「フロンクス」の実力をチェック    花村英典

クーペ風のフォルムの中に、段差のあるフェンダー(スズキは“ダブルフェンダー”と表現する)が象徴する力強さ、メインライトをバンパー部に配置する灯火の先進性を併せ持つ。優雅さと力強さ、そして先進性がバランスするエクステリア・デザインが特徴だ。

プラットフォームは、「スイフト」などにも使われているHEARTECT(ハーテクト)プラットフォームを採用。心臓部には1.5リッターのK15C型水冷直列4気筒エンジンを搭載する。

最高出力は74kW(約100PS)/6000rpm、最大トルク135Nm/4400rpmだ。トランスミッションは6ATで、2.3kWのモーターを使うマイルドハイブリッド仕様となる。日本仕様としてFFだけでなく4WDモデルも用意されている。また、足回りのセッティングも日本に向けて調整されているという。

インテリアには上質感と十分なスペースを確保

クローズドのアスファルトコースで見たフロンクスの実車は、キャビンが小さく、精悍さを感じさせる。195/60R16のタイヤ&ホイールという大きな足回りのサイズ感は “立派さ”を演出する。小さいというよりも、精悍で立派なクルマという印象だ。

インテリアは「上質になったスイフト」というものであった。ディティールこそ異なるものの、インパネの造形などはスイフトに近いものがある。

スズキ「フロンクス」の実力をチェック
スズキ「フロンクス」の実力をチェック    花村英典

ただし、細かな作り込みや質感はフロンクスが一歩リードする。また、レザーとファブリックのコンビシートも高級感を生み出す。Bセグメントのコンパクトカー=エントリーカーというイメージを超える上質感と言えるだろう。

後席の居住性も十分。フォルムはクーペ風ではあるものの、後席の頭上のスペースは十分にあり、狭苦しさを感じさせない。大人4人でのロングドライブを苦もなくこなすことができるだろう。

バランスの取れた完成度の高い走り

試乗で最初に思ったのは、一歩目が意外に力強いということ。ただし、パワーが十分というわけではない。

試乗コースはアップダウンのきついワインディング風であったこともあり、快活に走るには、パドルシフトを駆使して、4000回転以上をキープする必要があった。その時のエンジン音は、4気筒らしい粒の揃ったビートを奏でる。

スズキ「フロンクス」の実力をチェック
スズキ「フロンクス」の実力をチェック    花村英典

一方、ゆったり走るときのエンジン音は、控えめそのもの。音量差にメリハリがあるのだ。また、スポーツモードを選べば、パドルシフトを使わずとも、常にエンジンの高回転が維持される。

最高出力は74kW(100PS)しかないものの、車両重量が1070kgしかないことで、それなりに楽しく走ることができたのだ。

ステアリングの手応えは重めで、足回りはシャキッとしている。ただし、クルマ全体の動きは、ゆったりと安定志向。俊敏にコーナーで向きを変えるのではなく、ゆっくりと、それでいて素直に鼻先を変えてゆく。また、ロールは少ないものの、路面のギャップは上手にいなしており、乗り心地は悪くない。

スポーティーではあるけれど、全体としては、安定&安心を志向する快適なハンドリング&乗り心地であったのだ。

ルックスはクーペライクでありながらも、インテリアには上質感がある。走りの方も、キビキビ走ることはできるけれど、基本的には快適で安定志向。スポーティをベースにしながら上質さをトッピングしたモデル。言ってみれば、インテリアも走りも「上質なスイフト」。それがフロンクスであったのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。
  • 撮影

    花村英典

    Hidenori Hanamura

    1970年生まれ。東京写真専門学校を卒業後、ファッション誌、バイク誌を経てフリーランスへ。現在は自動車専門誌を中心に撮影。はじめて買った車はMR2(AW11)。ドライブとセダンとMTが好き。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事