伝説的な物語になった「黒歴史」 ロータス・カールトン(2) 盗難被害から水没状態で発見

公開 : 2024.07.28 17:46

パトカーとして活躍したローバーSD1 3500も

ウェスト・ミッドランズ州で、リチャードと合流。以前と同じナンバープレートが張られた、ロータス・カールトンの鍵をお借りする。直列6気筒ツインターボエンジンは、すぐに勇ましいサウンドで目覚めた。

当初の愛車が放置された運河は、ここからさほど遠くない。「自分の記憶へ強く刻まれた事件になりました。社会の注目も高かったですね」。1999年に警察を退職したブライアンが、インペリアル・グリーンのカールトンを見つめながら口にする。

ローバーSD1 3500(1984年式/英国パトカー仕様)
ローバーSD1 3500(1984年式/英国パトカー仕様)

「毎朝、これを見かけなかったかと聞かれました。目立つクルマなのに、ナンバープレートも覚えやすい40 RAなんです。生意気でしたよね」

今回、一緒にご登場願ったのは、レストアを終えたばかりのローバーSD1 3500。ウェスト・ミッドランズ州のパトカーとして活躍してきた車両だ。1984年式で、当時でも旧式になっていたが、40 RAを追跡した可能性はある。

これを所有するのは、デビッド・ニューボールド氏。100km/hで走るには、ツインSUキャブレターの調整が必要になるらしい。彼と一緒に、メカニックのジェイミー・ウィリス氏もやって来た。

ブライアンはロータス・カールトンに乗り、かつて向き合った困難を回想する。「これは、当時の最先端でした。速さへ対応する手段が、われわれにはありませんでした」。だが今では、路上にはナンバープレートの読取りカメラが整備されている。

伝説的な物語になった黒歴史

1994年でも、V8エンジンを積んだランドローバーレンジローバーより、特別なカールトンは余裕で速かった。SD1 3500には悪いが、動力性能には圧倒的な差がある。

6速マニュアルは、シボレーコルベット ZR-1のものが流用されている。ロータスの技術者はトランスミッション・トンネルを加工し、シフトレバーの場所を確保した。

インペリアル・グリーンのロータス・カールトンと、パトカー仕様のローバーSD1 3500
インペリアル・グリーンのロータス・カールトンと、パトカー仕様のローバーSD1 3500

ターボチャージャーが回転数を高める前から、24バルブの直列6気筒ユニットはパワフル。リミテッドスリップ・デフと、チューニングされたサスペンションが、しっかり57.8kg-mの最大トルクを受け止める。

ただし、トラクション・コントロールはない。窃盗団がコントロールを失うことなく、11回も逃走できたことには驚いてしまう。

高速道路を降り、ウェスト・ミッドランズ州のとある商店街へ。現在は違うが、過去に窃盗被害にあった新聞店があった場所だ。ロータス・カールトンとパトカーのペアは、少なくない注目を集める。

かつてを知る地元の人が、「盗まれたクルマですか?」。と興味深げに聞いてくる。インペリアル・グリーンの落ち着いた4ドアサルーンへ、次々にスマートフォンのレンズが向けられる。

新車当時、40 RAのナンバーの1台は、ロータスにとってもヴォグゾールにとっても頭痛の種だった。黒歴史かもしれない。しかし時間が過ぎた今では、不謹慎だとしても、このカールトンの速さを裏付ける伝説的な物語になったようだ。

協力: ウェストマーシア警察、ブルーライト・ビークル保存グループ
執筆:ライアン・スタンデン(Ryan Standen)

ロータス・カールトン(1989~1992年/英国仕様)のスペック

英国価格:4万8000ポンド(新車時)/9万ポンド(約1818万円/現在)以下
生産数:949台(ロータス・オメガを含む)
全長:4763mm
全幅:1930mm
全高:1435mm
最高速度:283km/h
0-96km/h加速:5.2秒
燃費:8.1m/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1690kg
パワートレイン:直列6気筒3615cc ツイン・ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:382ps/5500rpm
最大トルク:57.8kg-m/4200rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・カールトンの前後関係

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