3モーター/829psのオープンGT マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレへ試乗 早朝のイタリアが極上体験

公開 : 2024.07.30 19:05

合計829ps 驚くほど敏捷なコーナリング

グランカブリオ・フォルゴーレに載る駆動用モーターは、合計3基。1基当たりの最高出力は407psだが、システム合計では829psへ制限されている。駆動用バッテリーが、それ以上の電力を供給できないためだという。

とはいえ、すこぶる速い。0-100km/h加速は2.8秒。アクセルペダルの反応は滑らかで、パワーを引き出しやすい。むしろ、むち打ちする勢いの加速力は不要だろう。

マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)

ブレーキペダルの感触も線形的で、効き具合を調整しやすい。連続するコーナーが、待ち遠しくなるほど。

アウディSQ8 e-トロンも3モーターで、トルクベクタリング機能も実装されるが、実際に楽しめる能力までは備えていない。テスラモデルS プレイドも同様だ。

しかしマセラティの味付けは絶妙。ステアリングホイールのセレクターを回すと、トルクベクタリングとスタビリティ・コントロールの効きを調整できる。

設定次第では、リアアクスルが回頭をアシストし、2340kgのボディを驚くほど敏捷に感じさせる。サイズがひと回り縮んだように思えるほど。充分な道幅があれば、動的能力を存分に発揮できる。

穏やかに公道を走らせれば、エアサスペンションがしなやかに伸縮し、乗り心地はスポーツカーとして例外的に優秀。ステアリングのレシオも直感的といえ、スムーズで狙い通りにフロントノーズを導ける。

段差を超えた時などに生じる、ボディの粗野な振動は最小限。少し速めのペースで駆け抜けるのが、最高に気持ちイイ。

高い理想を抱きたくなるオープン・マセラティ

ちなみに試乗車のボディカラーは、パーソナライズ・シリーズのフォーリセリエに設定される、オレンジ・デビル。非常に美しいが、悪魔級に高い。このシリーズの塗装色には、1万6000ポンド(約323万円)から3万ポンド(約606万円)の追加費用が必要だ。

荷室はだいぶ小さく、航続距離は強みとはいえず、英国価格は18万5610ポンド(約3749万円)から。この電動マセラティに、どの程度の需要があるのか、疑問がないといえば嘘かもしれない。

マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)

それでも、相当に魅力的なオープン・グランドツアラーだと思う。急速充電能力が優秀で、1度の充電でもっと遠くまで走れればと、高い理想を抱きたくなるほど。

早朝にソフトトップを開き、イタリアの湖畔を走らせるのは極上体験だった。V8エンジンのサウンドがないのは寂しいが、小鳥のさえずりを楽しめる。清々しい空気も存分に味わえる。スタイリングも、うっとりするほど美しい。

マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)のスペック

英国価格:18万5610ポンド(約3749万円)
全長:4959mm
全幅:1957mm
全高:1353mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:2.8秒
航続距離:418-447km
電費:4.1-4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2340kg
パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:83.0kWh(実容量)
急速充電能力:270kW
最高出力:829ps
最大トルク:137.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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