【値上げしてもまだまだお買い得】 アウディRS3セダン 今や希少な純ガソリン高性能車の価値

公開 : 2024.07.12 17:45

コンパクトなボディでハイパフォーマンスが際立つ存在のアウディRS3セダンに試乗。富士スピードウェイで以前試乗経験のある吉田拓生が公道で今や希少な純ガソリンモデルとなった一台を試します。

ドリフト禁止! 残念だった第一印象

新型のアウディRS3セダンを最初にドライブしたのは2021年の年末、富士スピードウェイで発表された時だった。

今どきこれだけコンパクトなボディに400psというのがまず新鮮だ。しかもアウディ伝統の直列5気筒ターボ。しかも駆動はクワトロである。メカニズムが室内スペースを圧迫しかねないような凝縮感は「技術による前進」をスローガンとしているアウディならではである。

アウディRS3セダン公道試乗
アウディRS3セダン公道試乗

さらにこの新型RS3は、リアデフにRSトルクスプリッターなる新兵器を備えている。これは安いクルマなら呼び名こそ立派だが、実はABSをつまんでベクタリングするだけだったりするのだが、さすがにRSを名乗るアウディはコストが掛かっている。

デフの両脇に電制の湿式多板クラッチを備え、より精密にベクタリングを行うことでアンダーステアを消してくれるらしい。逆にクラッチを切ることで完全な前輪駆動にもなるし、ドライブモードに追加された専用モード「RSトルクリア」ではトルクをリア外輪に集めることでドリフト走行が可能になるという。

富士での初試乗はスペックを聞いただけで興奮していたのだが、周回数はたった1周! しかもドリフト禁止というお達しまで出たので、実は大した記憶がなかったりする。

しかもサーキットの速度域なので、アシの質感なども普段の感覚とは違ってよくわからないというオマケつき。公道試乗とはいえ“おかわり”にちょっと期待してしまう回だったのだ。

年々重みを増す純ガソリン高性能の価値

RSのエンブレムを見ずともフツーじゃない雰囲気があふれ出す派手なグリーン色と真っ黒系のお顔。

今回RS3セダンとの再会で最初に感じたのは「これは貴重な1台だ!」ということ。何しろ純ガソリン・エンジンのハイパフォーマンスモデルである。2年半前でも電動化の波は押し寄せていたが、今ほどの切迫感はなかったように思う。1600kgという車重も床下バッテリーではなく、ギミックの積であると考えれば重くは感じないのである。

アウディRS3セダン公道試乗
アウディRS3セダン公道試乗

シートやコクピットはかなりタイトだが、走り出すとそのタイト感と引き締まったシャシーの質感が見事に符合し、ドイツの高性能車に乗っている! という実感がひしひしと伝わってくる。物理スイッチがずらりと並んだダッシュまわりもかえって新鮮。

ディスプレイの中に全部入れちゃいました! という電気仕掛けの新型車とは一線を画するのだ。硬質なステアリングで265幅の極太前輪を切っている感じも他に似ない凄みがあっていい。

直列5気筒ターボは踏みはじめからすこぶるパワフルで、7速のDCTとの相性も良く車重を感じさせない。加速はクワトロらしくトラクションが4輪に均等に入る感じで、ほとんどリアを沈ませず前に出ていく。

一つ残念だったのは排気音で、5気筒ならではの高めの連続音が響くのかと思いきや、ターボということもあるのか期待していたほどではなかった。シフト時のバブリング音含め、プログラミングされている感が強いのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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