むしろ2024年にピッタリ! ホンダ・インサイト アウディA2(2) 軽く小さいクルマは走りも楽しい

公開 : 2024.07.20 09:46

軽く小さいクルマのエンターテインメント性

本当に軽く小さなクルマが、いかに高いエンターテインメント性を備えているのか、改めて痛感せざるを得ない。ここでは、大は小を兼ねていない。

動的な活発さが光るのはA2。ややスローレシオなステアリングへ、積極的に反応する。慣性が小さく、トップ・アスリート級に敏捷。ヘアピンカーブも、水を得た魚のように駆け抜けられる。

アウディA2 1.4TDI(1999〜2005年/英国仕様)
アウディA2 1.4TDI(1999〜2005年/英国仕様)

タイヤ幅は185と細いが、グリップ力も充分。前後アクスルへ荷重が分配され、操縦性のバランスも良い。ボディロールは小さく、フラットに旋回できる。

ちなみに2000年の英国編集部は、B5系のRS4より、A2の方が優れたドライバーズカーだと評価している。冗談のようだが。

つぎはぎの多い都市部の舗装では、乗り心地はゴツゴツと滑らかではない。だが、それが唯一の弱点だろう。

サスペンションが柔らかいインサイトは、乗り心地が良好。スタイリングレシオは、A2よりクイック。ただし、タイヤ幅は165と更に細く、気張りすぎるとグリップが抜けてしまう。

それでも、重心が低く車重も軽く、身のこなしは鋭敏。カーブを安定して旋回し、正確にライン取りできる。途中に凹凸があっても、高い速度域を保てる。運動エネルギーが無駄にならず、優れた燃費にも結びつく。

2024年の状況にバッチリ応えられる?

パッケージングやエネルギー効率の優秀さを知ると、冷遇された25年前が残念に思えてくる。少なくとも、インサイトは北米で一定の支持を集め、7年間のモデルライフで1万4000台以上が売れた。他方、欧州では約400台に留まった。

その頃のホンダは、ハイブリッド・システムを実証する旗振り役だと主張していた。確かに、その役割は果たせたといえる。世界市場をリードする、現在の日本車のハイブリッド技術を見れば、説明は不要だろう。

ホンダ・インサイト(初代/1999〜2006年/英国仕様)
ホンダ・インサイト(初代/1999〜2006年/英国仕様)

対するA2は、アウディに落胆を残しただけかもしれない。メルセデス・ベンツAクラスのライバルとして想定されたが、販売は4:1の割合いで大差が付いた。しかも開発・製造コストが高く、1台売れる毎に4000ポンドの損失が生まれたとか。

2024年の自動車には、25年前以上に環境負荷を抑えることが求められている。この2台が、今という状況にバッチリ応えられると感じるのは、筆者だけだろうか。

挑戦的で楽観的だった、1990年代の自動車メーカーの姿勢も、魅力的に思えてくる。当時のデザイナーやエンジニアの洞察力にも、感心せざるを得ない。

A2のデザインは、まったく古びていない。インサイトのパワートレインは、現在でも通用する。無責任なアイデアかもしれないが、それぞれ必要なアップデートを加えて1台に融合したら、悪くない競争力を持つモデルが完成するかも。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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