RWD「最初で最後」の600馬力超え アウディR8 V10 GTへ試乗 ストレスフリーこそ最大の偉業

公開 : 2024.07.26 19:05

アウディのスーパーカー、R8がグランドフィナーレ 333台限定のV10 GTは2022年にリリース RWD最初で最後の600馬力超え 運転はストレスフリー 別れを辛くする爽快感 英編集部が試乗

生産が終了したR8 最後を飾ったV10 GT RWD

2024年6月、モータースポーツで最も過酷なレースの1つ、ニュルブルクリンク24時間でアウディR8 LMS GT3エボIIが優勝した。濃霧による中断という結果ではあったが、そのベースモデルの生産終了をお伝えするのは、なんとも心苦しい。

ポルシェBMWメルセデスAMGフェラーリなどと比べても、R8の優しいロードマナーは素晴らしかった。だがアウディは潔く、既に歴史上のモデルとして気持ちを切り替えたようだ。

アウディR8 V10 GT RWD(英国仕様)
アウディR8 V10 GT RWD(英国仕様)

2024年3月に、ベガス・イエローに塗られた最後のR8 パフォーマンス・クワトロが、ドイツ・シュトゥットガルト近郊のベリンガー・ヘーフェ工場からラインオフした。類まれなミドシップ・スーパーカーの系譜は、18年間で終止符が打たれた。

ポルシェは、911のハイブリッド化へ踏み出した。R8の兄弟といえるランボルギーニウラカンも、V8エンジン・ハイブリッドの次世代へ生まれ変わろうとしている。しかしアウディは、電動パワートレインへ注力し、内燃エンジンからの撤退を進めている。

もしR8の次世代が登場するなら、それは2基か3基の電気モーターを搭載しているはず。大きな駆動用バッテリーも。

アウディは、そんな2代目R8の最終仕様として、V10 GT RWDを2022年にリリースしていた。生産数は333台の限定。もちろん完売済みで、カーボンファイバー製のセンターコンソールに、シリアルナンバーが記されている。

RWD最初で最後の600馬力超え 見た目も精悍

ただし、歴代のR8で最強というわけではない。ドイツのチューナー、ABT(アプト)が、XGTという超硬派なモデルを提供している。これは、公道用のGT2マシンといっていいだろう。

それでも、アウディ自ら手掛けた例としては、頂点に位置する1台といえる。後輪駆動のR8としては最初で最後となったが、最高出力は600馬力超えの620psに達し、最大トルクも57.5kg-mへ上昇していた。通常のV10 RWDは、570psと56.0kg-mだ。

アウディR8 V10 GT RWD(英国仕様)
アウディR8 V10 GT RWD(英国仕様)

7速デュアルクラッチATも、ショートレシオで再調整。より鋭い直線加速を叶えつつ、一層エキサイティングに5.2L V10エンジンを堪能できる。通常のR8では、2速で8700rpmのレッドラインまで引っ張ると、120km/h以上に達してしまうのだ。

またトラクション・コントロールには、トルクリア・モードを追加。アルカンターラ巻きのステアリングホイールへ追加されたダイヤルを回せば、電子アシストの強度を7段階から選択できた。

R8 V10 GT RWDのアルミホイールは、専用の鍛造品。ブレーキはカーボンセラミック・ディスクで、車高調整式のコイルオーバーキットがオプションで選べた。

ボディキットもかなりアグレッシブ。機能美溢れるR8が、さらに精悍に仕立てられていた。最後に、再びこのステアリングホイールを握ってみよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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