F1最強技術を注ぎ込んだ「市販」ハイパーカー 1200馬力のV10ハイブリッド レッドブルRB17限定生産へ

公開 : 2024.07.16 06:05

サーキット専用のV10ハイブリッド

当初の計画では、V8ツインターボエンジンで後輪を、電気モーターで前輪を駆動する四輪駆動にする予定だった。しかし、最終的にはコスワースが開発したV10自然吸気エンジンが採用され、よりオーソドックスなハイブリッドシステムが組み合わされる。

V10単体で最高出力1000psを発生し、最大回転数は1万5000rpmに達する。カーボンファイバー製トランスミッションに200psの電気モーターが組み合わされ、モーターは発進加速をアシストするだけでなく、スターターモーターやリバースギアの役割も果たす。

英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開されたレッドブルRB17
英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開されたレッドブルRB17

車両重量は、エアコンやフロントガラスなどを除いた最も軽い状態でわずか805kg。全長約5m、全幅約2mである。

今回英国で公開された実寸大モデルは、昨年8月にデザインされたものである。ニューウェイ氏によると、その後の開発作業によって「少し小さくなっている」という。

タイヤは3種類から選べる。いずれもRB17用にミシュランと共同開発されたもので、マシンのポテンシャルを最大限に引き出すスリックタイヤも含まれる。

公道走行はできないが、ニューウェイ氏によれば顧客の希望次第で公道向けに改造することも可能なようだ。工場出荷時はサーキット専用車であるため、排出ガスや安全性に関する法規制には拘束されないが、LMHのモータースポーツ安全規制に準拠しているという。

RB17に既存のレースシリーズに参戦する資格はないが、レッドブルが顧客向けにサーキット走行体験を提供する。

今後、フェルスタッペン選手らF1ドライバーが開発を支援する一方で、より幅広いドライバーたちも招待されてテストに参加し、扱いやすいマシンへと仕上げていく。

レッドブルは2年間で50台を自社生産する。エンジンがホンダ製ではなくコスワース製であることを除けば、F1マシンと同じサプライヤーを使用する。

伝説的技術者の最後の仕事

以下、レッドブル・テクノロジー・グループ、チーフ・テクニカル・オフィサーのエイドリアン・ニューウェイ氏とのQ&A。

――なぜレッドブルはこのマシンを作ろうと決めたのですか?
「レッドブルは常に最高レベルのことを行い、新たなランドマークを作りたいと考えています。少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、RB17はランドマーク的なクルマとして語り継がれると思います」

RB17発表の場に現れたエイドリアン・ニューウェイ氏(左)とクリスチャン・ホーナー氏(右)
RB17発表の場に現れたエイドリアン・ニューウェイ氏(左)とクリスチャン・ホーナー氏(右)

「サーキットに到着してヘルメットをかぶり、キーを回してピットレーンを走り去り、F1のラップタイムを出すことができるクルマです。これはまったくユニークなことだと思います」

――アストン マーティン・ヴァルキリーとの違いは?
「実のところ、両車はまったく異なるプロジェクトです。ヴァルキリーは、レッドブル・アドバンスト・テクノロジーズが2014年に手掛けた最初のプロジェクトでした。非常に若くて経験の浅いチームで、そのようなプロジェクトはやったことがありませんでした。チームはそれ以来ずっと一緒に行動し、経験も人数も大きく成長しました。研究段階でより多くの時間を割いたことも相まって、より多くの宿題をこなし、ファウンドリーを行う機会を得ました」

「このクルマには、ヴァルキリーにはないものがたくさんあります。室内には収納スペースがあり、ヘルメット2個とバッグ2個が入るラゲッジスペースがある。エンジンはソリッドマウントではなくラバーマウントを採用し、キャビンの騒音レベルを下げています。その結果、重量が10kg重くなりましたが、これはバランスのとれた製品を生み出すための解決策です。キャビンにいると燃焼音が聞こえてきます」

――V8からV10に変更した理由は?
V8ツインターボからスタートしたのは、内燃機関から約1000psが必要だったからです。目標としていたエンジン重量(150kg)でそれを達成するにはターボしかありませんでした。それからパワートレイン部門と協力し、自然吸気エンジンからパワーを引き出すにはどうすればいいかを検討し始めました。答えは回転数でしたが、どうすれば高回転を実現できるのか? それはバルブスプリングではなく空気圧バルブにすることで実現できました」

「重さ150kg、1万5000rpmで1000psを発揮する自然吸気V10を実現するために、耐久性向上のための作業を続けているところです」

――スタイリングにも携わったのですか?
「(F1では)ストップウォッチが支配者なので、エアロは見た目よりもパフォーマンスを重視しなければなりません。とはいえ、エレガントに美しく見えることもよくあると思います。スピットファイア、コンコルド、ブルーバードがそのわかりやすい例でしょう。わたし達は絵を描くとき、見栄えもよくエレガントなソリューションを考え出そうと意識しています」

――ドライビング・エクスペリエンスはどのようなものですか?
「ドライビング・エクスペリエンスとしてはアナログ的なもので、特にコーナーでのバランスやスピードに関しては、すべてノブやスイッチで調整できます。ノートパソコンを使わなくても、クルマに乗ってノブやスイッチを操作するだけでチューニングできるようなクルマにしたい。現実には、スイッチと操作機構の間で何が起こるかは電子制御されることになります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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