フォード・トルネオ・クーリエ 詳細データテスト 商用由来らしからぬ足さばきと乗り心地 価格は高い

公開 : 2024.07.20 20:25  更新 : 2024.07.27 02:32

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

良好な横方向のボディコントロールは、この手のクルマでは見落とされやすい要素だ。しかし、重い荷物を積んだ上にルーフボックスなどを取り付ける可能性が高いことを思えば、しっかりしたグリップやスタビリティ、そして多少なりともハンドリングの穏やかさに余力があることには意味があるといえる。

それらすべてを、このトルネオ・クーリエは備えている。平均的なバン由来のモデルに比較すると、乗り心地にはよりタイトな感じがたしかにある。これは、ダンパーとスプリングのレートによるものだ。そのフィールはいかにもフォード的で、コーナーやバンプを思ったよりもちょっとだけ速く、挙動を乱さずに駆け抜けることができる。

フォードの取り柄である走りは、同じプラットフォームのハッチバックやSUVほどではないまでも感じられる。
フォードの取り柄である走りは、同じプラットフォームのハッチバックやSUVほどではないまでも感じられる。    JACK HARRISON

ステアリングも、やや重めの手応えとやや早いペースで同じように感じられる。たとえ、長めのホイールベースと平均的なグリップレベルが、結局はどうコーナリングしてもアジリティを感じさせないとしてもだ。

いったんコーナーへ入ると、このクラスのアベレージよりは多少元気に走るように思える。小さくロールするが、極度な傾きにはむしろうまく耐えている。また、適切なシャシーバランスとステアリングの威勢が、運動性の限界まで保たれる。その限界は、アウトドアで気球を追いかけたり夜明けの海を目指したりして、はたまた遅刻しそうで飛ばすくらいなら、十分以上に高い。

グリップ限界では、スタビリティコントロールがやや荒くでしゃばり気味に介入する。また、コーナー途中のバンプをちょっとハードに乗り越えると、ステアリングに少々キックバックが出て、アクスルがガチャガチャ言いはじめる。

どのクルマでもそうだが、気持ちよく走れるゾーンというものがこのクルマにもある。とはいえ、それは想像するより広い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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