レストア初挑戦は「21歳」 でもペブルビーチでクラス3位の偉業! タルボ105 エアライン(2)

公開 : 2024.08.04 17:46

奇才のロシュが手がけた最後のタルボが105 亡くなった祖父の夢をオークションで落札 21歳の若さで取り組んだレストア ペブルビーチでクラス3位の偉業を掴んだ1台を、英編集部がご紹介

落札者は母を泣かせた21歳の英国人

オークションへ出品されたタルボ105 B1のボディパネルは、14本の結束バンドで固定されるという有様ながら、3万ポンド近い取り引きに至った。落札者は、当時21歳という若さのチャーリー・エリオット氏だった。

「入札の開始直後に、予算の上限へ達してしまいました。そこで諦めるべきだという周囲のアドバイスへ反し、最後にもう一度挙手し、競り勝ったんです」。グレートブリテン島南東部、エセックス州に住むエリオットが笑う。

タルボ105 B1 エアラインと若きオーナー、チャーリー・エリオット氏
タルボ105 B1 エアラインと若きオーナー、チャーリー・エリオット氏

「車両が届けられた時、配送員が部品に違いない木片や金属片を適当に投げ込んでいるのを見て驚きました。何の部品なのか、検討も付きませんでしたが。母は出品時の紹介映像を見て、ローンを組んでまでこれを落札したのかと、泣いていましたね」

「お金持ちな家系ではなかったので、家族からの愛とサポートに助けられました。自分の夢を信じてくれたんです。様々な感情が入り混じった、レストアといえましたね」

「部品は明らかに足りず、複雑な設計も課題になりました。優秀なレストア職人の方は忙しいので、時間調整も重要でした。多くの人に協力していただき、本当に幸運です。このクルマを作った人々のことを思うと、感慨深いですよ」

少なくとも、エンジンはリビルド済みだった。彼の友人で若きエンジニア、ジェイク・ニューマン氏は、2日ほどで再始動に成功したそうだ。それでも、再びリビルドが必要だという結論へ最終的には至っている。

父や友人も加わった、祖父を哀悼するレストア

BMWとミニの販売へ関わるエリオットは、レーシングカーやクラシックカーに囲まれて育った。11歳から数年間は、後にF1レーサーになるドライバーとともに、ゴーカート・レースへ熱中してきたという。

そんな彼の祖父、デビッド・マシソン氏は、タルボ14/45を所有していた。夢の1台として、頻繁に口にしていたのが105だったそうだ。5年前に亡くなった時、祖父を哀悼するため購入を決意したと説明する。

タルボ105 B1 エアラインのレストア作業の様子
タルボ105 B1 エアラインのレストア作業の様子

できるだけオリジナルへ忠実なレストアを当初から考えていたエリオットは、自身が稼いだ資金と余暇のほぼすべてを、105 1Bへ費やした。2017年から6年間も。

作業には、彼の父と友人のニューマン、その父に加えて、叔父のジョン・ゴート氏も加わり、深夜に及ぶことも多かった。「作業に役立つ人脈はありました」。とエリオットが振り返る。

もちろん、専門家も頼った。ドア・ヒンジは、職人によって無垢の真鍮からフライス加工で削り出されている。ボディの木製フレームは、大工から加工法を学んだ。「作業の貫徹には、ある種の狂気も必要としましたね」

「アメリカのペブルビーチ・コンクール・デレガンスへの出展が決まり、2023年という期限もありました。エンジンは、専門家のリー・ラングストーンさんへ仕上げていただきました。彼がいなければ、コンクールへ辿り着くことはできなかったでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

タルボ105 エアラインの前後関係

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