レストア初挑戦は「21歳」 でもペブルビーチでクラス3位の偉業! タルボ105 エアライン(2)

公開 : 2024.08.04 17:46

ペブルビーチでクラス3位のツートーン

「出荷予定の数日前まで、組まれていない部品が沢山。アメリカに着いてからも、3kmほど試乗しただけ。コンクールの参加車両の多くは、プロのスタッフによって綺麗にしてもらいます。でも、僕らは自分たちで磨きました」

「電気系統をチェックしておらず、クラクションを鳴らすのに現地で分解することに。それでも、最高の1週間でした。アメリカの人々はとても親切でしたね。英国人の方が高飛車だったかも。ツーリングイベントのツール・デレガンスも、完走できています」

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスへ出展した、タルボ105 B1 エアライン(1935〜1937年/英国仕様)
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスへ出展した、タルボ105 B1 エアライン(1935〜1937年/英国仕様)

エリオットたちが仕上げた105 B1は、ヨーロピアン・クラシックスポーツ・クラスで見事に3位入賞を果たした。彼のような若さで、これほどの気概と機知を持った人物は、極めて珍しい。どんな思いで表彰台に登ったのだろう。

ボディは、ブラックとガンメタリックのツートーン。フロントガラスのピラー部分に、オリジナルの塗料が残っており、そこから再現された。伸びやかなスタイリングに似合っている。

美しいフロントドアを開くと、ワイドなシャシーの大きさが良くわかる。枕のように肉厚なフロントシートは、鮮やかなレッド・レザー。必要に応じて、3名が並んで座ることもできる。クッションには張りがあり、天井が少し近い。

直列6気筒エンジンのブロックは、ブラック・エナメル仕上げ。特に飾らない雰囲気が好ましい。クラクションは、大音量と小音量用の2基。ステアリングラックとバルブカバーは、アルミニウムより軽量なマグネシウム製だ。

クラス3位の結果以上に胸へ刺さる偉業

戦前のモデルは、運転席からの視界が良くないことが多いが、これは広く見渡せる。大きなボンネット越しの景色は壮大。2枚組のリアウインドウも大きい。

3.0Lエンジンは滑らかに回り、粘り強い。洗練され上質で、落ち着いた雰囲気に包まれて運転できる。プリセレクター・トランスミッションは、優しく簡単に次のギアを選べる。スポーティな印象は、そこまで強くないけれど。

タルボ105 B1 エアライン(1935〜1937年/英国仕様)
タルボ105 B1 エアライン(1935〜1937年/英国仕様)

「トラフィック」遠心クラッチは、900rpmから繋がる。AT車と同様に、ブレーキを踏んだ状態で1速のまま発進できる。渋滞でも楽ちんだ。

ステアリングホイールから手を放すことなく、小さなレバーを上下に動かすことで、素早く次のギアを選べる。クラッチペダルを踏むと、レバーで選んだギアへ切り替わる。

ステアリングホイールは走り出すと軽く転じ、ロックトゥロックは2.5回転とクイック。心地良いエンジンサウンドをBGMに、軽快にカーブへ侵入できる。扱いにくいところはないし、鈍重な感じもない。ドラムブレーキは、意外なほど強く効く。

まだ30歳にもなっていないエリオットが、90年も前のヴィンテージカーのレストアを、これほどの高水準で仕上げたことに言葉を失ってしまう。ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでのクラス3位という結果以上に、胸へ刺さる偉業といっていいだろう。

タルボ105 B1 エアライン(1935〜1937年/英国仕様)のスペック

英国価格:625ポンド(新車時)/50万ポンド(約1億200万円/現在)以下
生産数:97台
全長:4877mm
全幅:1727mm
全高:1524mm
最高速度:143km/h
0-96km/h加速:19.0秒
燃費:5.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1930kg
パワートレイン:直列6気筒2969cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:120ps/4800rpm
最大トルク:−kg-m
トランスミッション:4速プリセレクター・マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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