F1王者アロンソの「理想の1台」 V12で6速MT、英アストン マーティン・ヴァリアント誕生秘話インタビュー

公開 : 2024.07.19 18:05

要望はどれだけ反映されたのか

――ヴァリアントで「これはできない」と言われたことや、誇りに思えるところは?
「たくさんあるよ。普通の答えは “ノー” だけど、チームは優秀だから、特にギアスティックをあんな風に露出させたように、何か方法を見つけてくれる。構造を変えるのは大仕事だけど、今ではいい特徴になっているね」

「スプリッターやディフューザーのようなエアロデバイスは、サーキットでは難しくないけど、ロードカーでは段差を越えたり、メンテナンスしたりしないといけない。公道を走るクルマに組み込む価値があるのか、疑問符がつくようなチャレンジもあったけれど、僕たちが求めたものはほぼすべて搭載されている」

アストン マーティン・ヴァリアントとフェルナンド・アロンソ
アストン マーティン・ヴァリアントとフェルナンド・アロンソ

「そして、ヴァラーより100kgも軽い。これはとても大きな目標で、僕が100kgと言うと、最初はノーと言われた。でも、ここで1kg、あそこで1.5kg、20kgと落としていった。100kgは大変な挑戦だったけれど、最終的には達成できたよ」

――軽量化のプロセスやチューニングには、どの程度関わっているのですか?
「あまり関与していない。チームが優秀なんだ。彼らは多くのF1チームと接触していた。アストン マーティンのF1チームとロードカーチームの関係はこれまで以上に緊密で、F1で使っている素材の一部を応用している」

「軽量化の一例としては、重心を下げるためにクルマの高い部分で軽量化を図っている。コックピット、シート、ステアリングホイール、コンソールなどは、F1では重心を下げるために重要な場所で、それがロードカーにもフィードバックされている。シートとコックピットは、ヴァラーとヴァリアントの大きな違いだと思う」

――あなたがいつまでレースを続けるかはわかりませんが、ロードカーの設計というセカンドキャリアは考えられますか?
「それはないかな。というのも、週末にレーシングチームを手伝うよりも、ロードカーをデザインする方がずっと難しいと思うんだ。僕はあと数年はレースに出るだろうけど、アストン マーティンとの契約は長期的なもので、ドライビングを担当した後は週末のレースでチームを助けることができる。ドライバーがさまざまな局面で週末に臨めるよう、彼らの体調を整え、集中力を維持し、週末をアシストし、レースでの決断(インターミディエイトタイヤ/ウェットタイヤ)を下したりと、ロードカーよりもそういうところで役に立てると思う」

「でも、クルマのテストはいつでも喜んでやるよ。アストン マーティンに入って以来、僕が気に入っているのはDBXのハンドリングで、ロールもピッチもない。プラットフォームは超安定していて、あのクルマに乗るといつも驚かされる。僕がモナコで運転するクルマであり、すべてのアストン マーティンの中で一番好きなクルマでもある。こうしたフィードバックはチームにとって有益だと思う」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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