初期の「ロータス」へ大影響 生存も奇跡的! ギャモンMG TC(2) 速さと親しみやすさに唸る
公開 : 2024.08.03 17:46
走行性能の高さと扱いやすさに唸る
鋭い加速にシフトダウンが必要なほど、ピーキーというわけではない。ハイリフトカムが組まれているが、低い回転域からトルクは太い。全体的にたくましい。バルブ径が拡大されており、吸排気の効率は改善されている。
ショートレシオなギアも、全力で走ろうという好戦的な性格を生み出している。確かに、標準のMG TCやTD ミジェットより遥かに速い。
着座位置は低めで、コクピットの開口部は大きめ。横へ手を伸ばせば、アスファルトの状態を触れて確かめられる。加速時には、フロントノーズが上を向く。ボンネットに溜まった水は後方へ流れ、小さなエアロスクリーンを乗り越えて、膝の上に滴る。
細いタイヤを考えると、安定性は驚くほど。ステアリングの反応はタイトでダイレクト。少し重すぎるが、コミュニケーション力は高く、運転へ夢中にさせる。多くの同時期の例と異なり、親しみやすいといっていい。
ギャモンもそれを実感していたのか、かつての個人売買の欄には、「非常に安全で扱いやすいクルマ」だと主張していた。サーキットでも、戦いやすかったに違いない。
手作りのアルミ製ボディは、正面から見ると少し不格好かもしれない。ナマズのような、魚っぽさがあるように思う。だとしても、1950年代半ばに製作された独自のスポーツカーとして、走行性能の高さと扱いやすさには唸らされる。
初期のロータスへ大きな影響を与えた1台
型落ちのMGをベースにしたマシンは多数作られているが、ギャモンMG TCは最も重要な1台に加える価値がある。初期のロータスへ、大きな影響を与えたことも間違いない。
手作りのワンオフ・スポーツカーが、2024年に生存していることも奇跡的だ。レースでクラッシュすると、放棄されてしまう例は珍しくなかった。完走を繰り返しても、時代が過ぎると部品取り車になることも多かった。
それは、歴代のオーナーがギャモンMG TCの速さと親しみやすさを、高く評価してきたからだろう。トリッキーなマシンを操った英雄伝説も、興味深いとはいえ。
サンダースが存命だった頃、レストア後に前オーナーのブルーマーへ試乗させたそうだ。彼は駐車場の周辺を1周。戻ってくると、これはお気に入りの1台だったんだと、笑顔で呟いたそうだ。
協力:クラシック・モーターハブ社