GT3 RSベースの「最高の992」現る ポルシェ911 S/Tへ試乗 ストリート前提の極上ドライバーズカー

公開 : 2024.08.02 19:05

最新911に公道へフォーカスした特別仕様登場 GT3 RSの兄弟といえるアナログ・ドライバーズカー MTが生む深い充足感 極上のNAフラット6 路面へ追従するサス 最高の992だと英編集部は絶賛

ストリート前提のアナログなドライバーズカー

実は、ポルシェが911にS/Tの2文字を与えるのは珍しい。初めてSが掲げられたのは、1967年。160psへパワーアップした911だった。

その後、レーシングカーの911 Rが登場する一方、モータースポーツを志す顧客には、911 Sのアップグレードキットを設定。1970年には公道用のオプションとして、M471パッケージが提供された。この仕様を、同社は非公式にSTと呼んでいたらしい。

ポルシェ911 S/T (英国仕様)
ポルシェ911 S/T (英国仕様)

それから半世紀後、992型のGT3やGT3 RSの開発に携わった技術者は、ストリートへ焦点を当てたアナログなドライバーズカーを作ろうと考えた。低く構えたスタンスの911に、往年のS/Tの2文字が与えられることになった。

ポルシェで「GT」を冠するモデル開発へ今も携わるヴァルター・ロール氏は、これまでで最高の公道用911だと説明する。世界ラリー選手権を2度も勝利したドライバーが語るのだから、相当な仕上がりなのだろう。

果たして、落ち着いたボディカラーをまとい、巨大なリアウイングは載らないが、基本的にS/TはGT3 RSの兄弟。ラップタイムを追求するのではなく、純粋に公道で運転を楽しむことを目的にしている。ニュルブルクリンクのタイムは、計測されていない。

トランスミッションはマニュアル。911 GT3と同じ6速だが、ショートレシオで、ファイナルレシオも詰められた。通常は2速で9000rpmまで引っ張ると、130km/hに達してしまうのだが、S/Tでは119km/hへ低下している。この差は小さくない。

GT3 RSに並ぶ525ps 徹底的な軽量化で1400kg切り

リアの自然吸気・水平対向6気筒エンジンは、3996cc。僅かに手が加えられ、最高出力はGT3 RSに並ぶ525ps。ドライサンプで、シリンダー毎にスロットルバルブが並ぶ。ピストンは鍛造で、コンロッドはチタン製だ。

ツインディスク・クラッチとシングルマス・フライホイールは専用の軽量化品。クランクシャフトが直接回す質量を、10.5kgも削っている。

ポルシェ911 S/T (英国仕様)
ポルシェ911 S/T (英国仕様)

リミテッドスリップ・デフは機械式。マグネシウム鍛造ホイールは、前20インチ、後21インチで、タイヤはGT3と同じサイズを履く。フェンダーとツライチでカッコいい。

軽量化は徹底的。992型で初めて1400kgを切っている。6速MTのGT3 ツーリングより38kg軽く、64Lの燃料タンクを満タンにして計測したら、1408kgだった。

フロントフェンダーとドアは、GT3 RS譲りのカーボンファイバー製。ロールケージとリアのアンチロールバー、補強用シャシーパネル、フロアパンもカーボンでできている。バッテリーは3kg軽い。

ドアを開くと、適度にクラシカルな雰囲気のインテリアが広がる。品質は高く、ヘリテージ・デザインのコニャック・レザーとクロスが美しい。歴代の911で、最も印象的な車内の1つだといえる。

タコメーターのグリーンは、初代911を彷彿。ドアパネルには、ストラップがぶら下がる。しっかり身体を包む、カーボン製シェルのバケットシートは標準だ。

ロールケージは見た目が素晴らしいが、実用性を考えると必要ないかも。そうすれば、フロントのボンネット内と合わせて、フェラーリ・ローマへ負けない荷室を得られる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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