存在自体が奇跡かも? マツダMX-30 R-EV 長期テスト(最終) 航続距離はBEVより優れるけれど・・

公開 : 2024.07.27 09:45

発電用ロータリーを搭載した、シリーズ式ハイブリッドのMX-30 マツダらしい楽しさは? バッテリーEVやプラグインHVとの能力差は? 英国編集部が長期テストで評価

積算8067+4319km 存在すること自体が奇跡?

プラットフォームを共有する、型にはまったようなモデルが増える中で、特別なエンジンが、スポーツカーではなく小さなハイブリッド・クロスオーバーに載っている。ロータリーエンジンのマツダMX-30 R-EVが存在すること自体、奇跡に近いのかもしれない。

つまり、周囲とは明らかに違うクルマを欲する人のための1台といえる。市場を見渡しても、MX-30 R-EVと同等の内容を持つモデルは存在しないと思う。

マツダMX-30 R-EV 170PS エクスクルーシブライン(英国仕様)
マツダMX-30 R-EV 170PS エクスクルーシブライン(英国仕様)

2024年に購入できる、普通ではない、普通車といってもいいかも。ただし、数か月試乗してみて、他メーカーが提供しない理由も見えてきた。

まずは観音開きのサイドドア。少し長めのフロントドアの後ろに、リアヒンジの小さなリアドアが付いている。コンセプトカーのようでカッコいい。このスタイルを採用した現行モデルは、フェラーリプロサングエだけだ。

しかし、実用性に優れるとはいいにくい。後席へ乗り降りするには、必ずフロントドアも開く必要がある。しかも、フロントドアは長く、狭い場所では乗り降りしにくい。狭い場所でリアドアも開くと、身動きが取れなくなってしまう。

リアドアには、外側にドアハンドルがなく、ウインドウも小さい。前席のシートベルトはリアドアから伸びており、後席の人が降りる時は、前席の人がシートベルトを外す必要がある。車内空間は4ドア相当だとしても、2ドアの不便さを背負っているように思う。

ガソリンとオイルを消費するパワートレイン

ハイブリッド・パワートレインも、ライバル以上に優れるとはいえないだろう。市街地ではバッテリーEVとして走れ、長距離移動時は小さなロータリーエンジンが発電を担い、大きな駆動用バッテリーを必要としていない。机上では理に適っているのだが。

確かに、市街地中心で乗っている限り、35.0km/L程度の燃費は得られる。他方、駆動用バッテリーだけで走れる距離は、現実的に83km程度。高速道路を110km/hでクルージングしていると、燃費は10.6km/Lへ落ちてしまう。褒められる数字ではない。

マツダMX-30 R-EV 170PS エクスクルーシブライン(英国仕様)
マツダMX-30 R-EV 170PS エクスクルーシブライン(英国仕様)

さらに、ロータリーエンジンはエンジンオイルも消費が多い。オイルセンサーが不調でランダムに警告灯が光り、あてにならなかったのだが、実際に確かめるとオイル量が基準値以下ということがあった。0W-20のオイルを、1.5Lも補充できたほど。

その後、パワートレインの異常が表示され、車両交換になったことは前回ご報告したとおり。ボディカラーはレッドからグレーへ変わったものの、基本的には同じ仕様のMX-30 R-EVがやって来た。

ところが、これも不具合を抱えていた。90km/hから95km/hの間で、クルマが不自然に振動するというものだ。これは、原因を確かめられなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト マツダMX-30 R-EVの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

マツダ MX-30の人気画像