運転を「特別な体験」にする力 マクラーレン・アルトゥーラ 長期テスト(最終) 環境問わず普段使い可!

公開 : 2024.07.28 09:45

より速く、より軽くを追求してきた、マクラーレン最新のアルトゥーラ 普段使いで新たな発見はあるのか V6ハイブリッド・スーパーカーの実力を長期テストで確認

積算9512km 問題視するほどのトラブルなし

眩しいエンバー・オレンジのマクラーレンアルトゥーラと、数か月を過ごしてきた。開発が遅れていたから、すべてが正常に機能するのか、初めは僅かな不安があったことは事実だ。

長期テストは、近郊を数100km走るだけではない。サーキットを数周するだけでもない。これまで1万km近く走り込んできた。振り返ると、トラブルと呼べそうなことは3つ起きたが、問題視するほどのことではないだろう。

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)

1つ目は、クルーズコントロール用のレバー。車間距離を任意に変更できる、アダプティブ仕様ではない部品が組み付けられていた。機能自体に不具合はなく、簡単な交換作業で修正され、許される範囲のミスといえるだろう。

2つ目は、完全に筆者の不注意。アスファルトに空いた大きな穴を、巨大な水たまりだと勘違いして通過したのだ。タイヤを超えてアルミホイールまで激しい衝撃が加わったが、被害を受けたのはタイヤ内に装備された温度・圧力センサーのみ。

このタイヤとホイールの、品質の高さを物語っている。サスペンションのアライメントが狂うこともなかったようだ。

3つ目は、フロア部分のシールから雨水が侵入したこと。大雨の中を容赦なく走らせていたら、助手席側のフロアカーペットが濡れていた。対応してくれたマクラーレンのスタッフは、珍しい事案だと話していたが、同じ症状が出たユーザーを筆者は他に知っている。

とはいえ、これも軽微なもの。たとえ自身の愛車だとしても、これを理由にクルマを突き返し、返金を要求することはないだろう。

ほぼすべての環境で問題なく普段使いできる

この3つ以外、アルトゥーラは完璧だった。ブリリアント!と叫びたいほど。

カーボンファイバー製タブに680psのハイブリッド・パワートレインを搭載しているから、驚くほど速いのは当然。グリップ力にも舌を巻く。落ち着きとバランスは秀抜で、油圧アシストのパワーステアリングの感触も素晴らしい。

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)

だがそれ以上に、少量生産のスーパーカーが、天候の安定しないグレートブリテン島の毎日を平然とこなしたことへ深く感心している。何しろ冬から春にかけて、2024年は雨が多かった。これなら、恐らくほぼすべての環境で、問題なく普段使いできるだろう。

短距離なら駆動用バッテリーで走れるから、人混みの中でも必要以上に注目を集めることはない。内燃エンジンが温まるより早く、霜で曇ったフロントガラスをクリアにできる。ポルシェ911と同じくらい、運転席からの視界は広い。

ステアリングホイールから手を放さずに、シャシーとパワートレインのモードを切り替えられるのも望ましい。アップル・カープレイへ対応しているのも便利だった。

シート後方の空間も合わせると、荷室容量は911より遥かに大きい。ダッシュボードにグローブボックスはなく、小物入れも不充分ではあるけれど。

車線維持支援機能は、車線を逸脱すると警報が鳴るものの、明確に白線をはみ出した場合のみ。ステアリングホイールへの介入もない。筆者は、この程度の監視で充分だと思う。デフォルトで、機能がオフなことも評価したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト マクラーレン・アルトゥーラの前後関係

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