史上最速のワーゲンバス! フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWBへ試乗 3列シート獲得

公開 : 2024.08.01 19:05

ワンボックスでは例外的な速さ 安定した走り

それでは、実走といこう。車重は2700kgもあるが、339psと56.9kg-mだから、ID.バズ GTXは充分に速い。ワンボックスカーでは、例外的なほど。前後の駆動用モーターのパワーを、タイヤが効果的に路面へ伝達。軽快にアスファルトを蹴り進んでいく。

特に、中間加速のたくましさが増した印象。高速道路での追い越しも、簡単にこなせる。試乗したドイツのアウトバーンにも問題なく対応でき、通常のID.バズより確かにパワフルだ。

フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWB(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWB(欧州仕様)

とはいえ車重は軽くなく、近年のバッテリーEVの中で、際立つような加速力ではない。フォルクスワーゲンは、GTXはGTIに並ぶ仕様ではなく、全体的にアップグレードされた四輪駆動版であることを主張している。それは、ID.バズでも当てはまる。

多くのユーザーを納得させるパワー感はあるものの、エキサイティングなワンボックスカーへID.バズが変身したと表現するのは、大げさだろう。沢山の人や荷物を、軽々と運べることは間違いないが。

シャシー設定に変更はなし。落ち着いた操縦性と乗り心地は、そのまま受け継いでいる。速度抑止用のスピードバンプを滑らかに乗り越え、路面の不整をしなやかにいなす。

四輪駆動化で、グリップやトラクションは明確に上昇したが、高速コーナーでは車重を実感させられる。低くない全高も。とはいえコーナリングは安定し、高さと重さをシャシーは巧みに受け止めていた。

航続は400km前後 通常のLWBが訴求力は上?

高速域では、風切り音が目立つように感じたが、それは通常のID.バズでも同様だった。LWBでも、小回りは良く効くようだ。

航続距離に関しては、今回は96%の充電量で発進し、走れた距離は368kmだった。フル充電なら、400km近く走れるはず。

フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWB(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWB(欧州仕様)

英国価格は未発表だが、ID.4とID.4 GTXが約1万2000ポンド(約245万円)の差だから、ID.バズでも同等に上昇すると考えていい。その場合、メルセデス・ベンツEQVより遥かに安い一方、キアEV9よりかなりお高いということになる。

ヘッドアップ・ディスプレイや電動スライドドア、パノラミックサンルーフなどはオプション。これを追加すると、さらに価格差は広がってしまう。

ワンボックスカーには不必要なほど、パワフルなID.バズのGTX LWB。優れた実用性と乗り心地、運転体験は、明らかな強みといえる。だが、実際の走りの変化は限定的ともいえるだろう。

冷静に俯瞰すれば、通常のID.バズ LWBの方がお手頃で、訴求力は高いかもしれない。価格設定が明らかになったら、改めて評価してみようと思う。

◯:扱いやすいパワフルさ 最大7シーターまで対応するパッケージング
△:通常のID.バズ LWBと比較して、そこまで速いわけではない 高めの価格

フォルクスワーゲンID.バズ GTX LWB(欧州仕様)のスペック

英国価格:9万6313ポンド(約1926万円)
全長:4960mm
全幅:1985mm
全高:1927mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:6.7秒
航続距離:402km(予想)
電費:4.8km/kWh(予想)
CO2排出量:−
車両重量:2700kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:86kWh
急速充電能力:200kW
最高出力:339ps(システム総合)
最大トルク:56.9kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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